「アメリカを再び強い国家にしたい」も保身のためだ

トランプ氏は入院先のウォルター・リード軍医療センターの会議室で、ペンス副大統領らと電話会議する写真を公開した。護衛が付き添うなか、公用車に乗って外出し、集まった支持者に手を振るパフォーマンスも見せた。明らかに自らの新型コロナ感染を選挙戦の武器にしている。大統領選に対するトランプ氏の意気込みはすさまじい。

ツイッターでもこう訴えていた。

「私は新型コロナウイルスについて多くを学んだ。新型コロナに人生を支配させてはならない。恐れるな。あなたたちには最高の医療設備と薬がある。ウイルスに打ち勝てる。すぐにワクチンも実用化される」
「来年は株価が史上最高になる。私に投票してくれ」

本当だろか。ウイルスを侮っている。

トランプ氏は大領職という最高の名誉を手にし、それを手放そうとはしない。人間の欲望は際限がないといわれるが、トランプ氏を見ているとそれがよく分かる。「アメリカを再び強い国家にしたい」と訴えるが、すべて己のためではないのか。

トランプ政権は新型コロナウイルスを侮っている

トランプ氏の退院で心配なのは、周囲に感染を広げる危険性があることだ。すでに大統領官邸のホワイトハウスでは10人以上が感染し、クラスター(集団感染)が発生している。

なぜ、このホワイトハウスクラスターが起きたのか。理由は簡単である。トランプ氏をはじめとする政権中枢が新型コロナウイルスを侮っているからだ。

ホワイトハウス
写真=iStock.com/vichie81
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テレビニュースに映し出される彼らの姿を見ると、大半がマスクを着けていない。新型コロナウイルスは飛沫感染によって広がる。飛沫とは患者・感染者がくしゃみや咳で飛ばすしぶきのことで、このしぶきの中に大量のウイルスが含まれている。大声を上げたり、大きな声で歌ったりしても飛沫は広がる。それゆえ患者・感染者のマスク着用は感染防止に役立つ。

しかもホワイトハウスの面々は3密(密閉・密集・密接)の回避も怠っていた。トランプ政権の中枢が、マスクの着用の意義や3密回避の重要性を知らないわけはない。要はトランプ政権は新型コロナウイルスを軽く見て侮っているのだ。その頂点にいるが、トランプ氏である。