今年2月に逝去した野球評論家・野村克也氏は、“歴代2位”の記録が多い。通算出場試合数、捕手出場試合数、通算安打、本塁打、打点。特に本塁打の記録は、打ち立てた翌年に王貞治氏に抜かれた。野村氏は「冷静を装っていたが、心の中は嫉妬の嵐で荒れ狂っていた。それでもライバルの王がいたからこそ、日々努力を重ねることができた」という――。

※本稿は、野村克也『老いのボヤキ 人生9回裏の過ごし方』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

野球スタジアムにバットとボール
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王に本塁打記録を塗り替えられ、嫉妬の嵐だった

27年のプロ野球人生で、それなりに記録を残してきた。ただ、どうも“歴代2位”の記録が多い。通算出場試合数3017試合、捕手出場試合数2921試合、通算2901安打、657本塁打、1988打点――。いずれも2位の記録だ。

引退後に塗り替えられた記録はさておき、現役中、1位を目指した記録の前に立ちはだかったのは、たいてい王貞治だった。

52本のホームランを打って初の本塁打王を獲得した1963年、「これで10年、俺の記録が破られることはないはずや」と思っていた。私の前の本塁打王は小鶴誠さんで、10年以上その記録は破られていなかったからだ。

しかし翌1964年、その記録はあっさり抜かれてしまう。それが55本を打った王貞治だった。記録を超されたことについて表向きは冷静を装っていたが、心の中では「この野郎!」とそれはもう嫉妬の嵐で荒れ狂っていた。