障害年金はどのように申請すればいいのか

面談から数日後、母親から連絡がありました。

長男からは「障害年金を請求してみたい。請求は筆者にお願いしたい」とのことで確認が取れたとのこと。ただし「筆者とのやり取りは母親を通して」という条件つきでした。

念のため、長男に会うことは可能か? と母親に質問したところ、それは難しいとの答えが返ってきました。恐怖感が先立ち、今はあまり人に会いたくない、話したくない、というのがその理由だそうです。

後日、長男の委任状や今までの通院履歴のメモ、お薬手帳のコピーなど必要な書類を母親から受け取った筆者は、請求に向けて動き出すとこにしました。

まずは長男の通院履歴を把握するところから始めます。メモとお薬手帳のコピーを参考にし、今までに通院した病院名と通院期間を洗い出しました。

洗い出しの次にすることは、「受診状況等証明書」(初診日の証明書)を病院で書いてもらうことです。

初診の病院は長男の元勤務先近くのメンタルクリニック。病院に問い合わせたところ、カルテは電子化されており、幸いにも当時の記録が残っていました。病院に書類の記載をお願いし、無事、受診状況等証明書を手に入れることができました。

医師または医師が診断を書き、男性患者に医療処方箋を与える
写真=iStock.com/SARINYAPINNGAM
※写真はイメージです

次は診断書です。

今回のケースでは診断書は2枚必要になります。障害認定日当時に通院していた病院と現在通院している病院の2カ所に診断書の記載をお願いしました。

診断書ができ上がるまで2~3週間ほどかかるので、その間、「病歴・就労状況等申立書」を作成することになります。この申立書は、発病から現在までの状況を可能な限り詳しく書いていく書類です。

具体的には、通院していた病院名とその期間、受診回数、医師からの指示、服薬の有無、日常生活の様子、就労の有無などを記載していきます。病歴・就労状況等申立書の内容は、母親を通して長男にも確認してもらいました。

長男にとって当時の出来事を確認するのはつらい作業になってしまいますが、母親のサポートを受けながら、さらに加筆修正を加えていきました。

その後、請求書やその他の添付書類もそろえた筆者は、無事、障害年金の請求をすることができました。

「日本年金機構から通知が届き、障害年金が貰えることになりました」

障害年金の請求から数カ月がたったある日、母親から電話がありました。

「お忙しいところ、すみません。今日はご報告があってお電話させていただきました。おかげさまで日本年金機構から通知が届き、長男は障害年金が受けられることになりました。その節はどうもありがとうございました」

「そうでしたか。それは一安心ですね。ちなみに級は何級でしたか?」

「面談でお話があった通り3級でした。しかも、さかのぼって年金が振り込まれるようです(過去5年分、約290万円)。それでですね。実は長男が『ぜひお話がしたい』と言っていますので、今から代わってもよろしいでしょうか?」

「はい、かまいません。どうぞ」

しばらく待っていると、長男のか細い声が聞こえてきました。

「もしもし……。あの、おかげさまで障害年金がもらえるようになりました。いろいろとサポートしていただき、どうもありがとうございました。また何かあったら、相談にのってください。お願いします……」

「はい。もちろん大丈夫ですよ。私にできることであればご協力します」

「それを聞いてちょっと安心しました……。では、母に代わります」

短い会話でしたが、人が怖いと言っていた長男が意を決して話してくれた、ということに筆者は少しうれしい気持ちになりました。

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