人間より約5億年も前に誕生した昆虫は、なぜ今まで生き長らえてきたのか。文筆家のペズル氏は「人間が生き物として大先輩である昆虫から学べることは多い。クロオオアリの生態と、それによって築き上げたアブラムシとの関係は象徴的だ」という——。

※本稿は、ペズル『もしも虫と話せたら』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

人が誕生したのは約700万年前

自粛しない人に対してイライラしたり、逆に自粛警察におびえたり……。新型コロナによって可視化された事実、それは「人によって『正しさ』の基準は違う」ということ。

ペズル『もしも虫と話せたら』(プレジデント社)
ペズル『もしも虫と話せたら』(プレジデント社)

ここ最近は、だれもが日々発表される感染者数を気にしながら、自粛と他粛のはざまでなんとも言えない不安な時間を過ごしています。そんな中で過度に人の目を気にしたり、人の行動に目くじらを立てても、混乱や対立を長引かせるだけ。とは言え、目に見えないストレスを抱え続けるのもつらいものです。そこで、ガス抜きも兼ねて少し目線を変え、人ではなく「虫」と向き合ってみてはいかがでしょうか。

昆虫が誕生したのは今から約4億8千万年前。一方、人が誕生したのは約700万年前。つまり、昆虫は生き物として人より約5億年も先輩です。

毎日更新される情報に振り回されるより、生き物として大先輩である昆虫の生存戦略から何か学べることはないだろうか。そんな視点でまずはアリの生態に目を向けてみたいと思います。