「病気がちな人」40歳の人が85歳まで生きて残ったお金は-4017万円

【ケース2】
「現役時代から病気がち」な人(55歳脳卒中、75歳認知症)
85歳で他界した時の預貯金→→「-4017万円」

人生の大半が健康体だった【ケース1】とは異なり、こちらは40代から高血圧症を抱えていた。定期的に通院していたものの、55歳で脳卒中を発症してしまう(発症後の年収は2割減で試算)。手術を受け一命はとりとめ、退院後2週間で職場に復帰できたものの、しびれなどの障害が残り、配置転換を余儀なくされ、収入が減少。そして、57歳での早期退職を余儀なくされ、退職一時金は60歳定年退職時の7割にとどまった。

女性理学療法士のケアは、リハビリセンターで脳卒中の犠牲者を助けます
写真=iStock.com/SDI Productions
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また60歳から公的年金を繰り上げ受給したため、本来の受給額から24%減額された。【ケース1】の退職金や年金に比べ、あきらかに見劣りする額となった。

基本生活費は、退職するまでは月額約20万円(住居費およびその他の支出を除く)。57歳に退職した後は8割として計算した。趣味の旅行は年2回したが、【ケース1】のようにスポーツジムに通わなかった。全体に、体のケアには無頓着だったといえる。

現役時代から持病があったことや運動不足だったことも関係したのか、55歳時の脳卒中に続き、75歳で脳血管性認知症を発症し、85歳で死亡した。40歳から85歳まで、持病の高血圧症を含む治療・投薬などにかかった費用や介護費などは、なんと計1600万円以上に達した(下記参照)。これらは【ケース1】では1円も負担しなくてすんだものだ。

▼医療費・介護費 合計(①+②+③):1614万4572円
●40歳で「高血圧症」と診断され投薬(40~55歳:157万2000円-①)
40~44歳:34万2000円 b)45~49歳:40万2000円 c)50~55歳:82万8000円 ※1、★1
●55歳で「脳卒中(脳梗塞)」を発症(55~85歳:368万2527円-②)
手術・入院費用:8万2527円(高額療養費適用後)※2、★2
退院後、投薬代・交通費(月1回通院):360万円 ★3
●75歳で「脳血管性認知症」を発症(75~85歳:1089万円-③)
薬物療法(検査および薬代):120万円 ★4
介護費用(在宅介護):969万円 ※3、※4、★5

なお、【ケース2】のみの臨時収入としては、以下のものがあった。

・脳卒中(脳梗塞)を発症した際、健康保険から傷病手当金を6カ月分受給(約160万円)。また入院時に医療保険から給付金を受け取る(約118万円)
・退職後、受給資格期間の延長を行い、傷病手当金受給後に雇用保険の基本手当を受給(約100万円)(自己都合退職)

このような臨時収入があったにもかかわらず、試算の結果、他界した85歳時の預貯金は「-4017万円」。つまり、人生の最終盤は、預貯金などをすべて使い果たし、4000万円超もの赤字状態。他界するずっと前から、生活が破綻していたことになる(67歳から赤字家計に転落)。

脳卒中を含む脳血管疾患はシニアや男性に多い病気のイメージがある。厚生労働省のデータによれば(2019年)、総患者数は111万5000人で全体的には減少傾向だが、30~40代などの若い世代や女性の罹患者が増えている。

脳卒中を発症すると、入院は中長期にわたりやすく、退院後も後遺症をもたらす可能性がある。がんと比較すると、寝たきりや介護が必要となるケースが少なくない点が厄介だ。

もし、現役世代の既婚者が脳卒中を発症すれば、自分だけでなく、妻や子どもなど家族の生活に甚大な影響を与える。独身・単身者であっても、働けなくなり、収入が途絶えれば、ライフプランが大きく変わってしまう。