アサヒが苦しいのは家庭用ビールも同様

しかし、アサヒが苦しいのは家庭用ビールも同様です。アサヒはビールのトップブランド「アサヒスーパードライ」を抱えていることが最大の強みですが、20年5月の販売動向では前年同月比で35%の大幅減。他のブランドに比べても下げ幅は大きいものでした。20年10月の酒税法改正によってビールは減税されるため、ビールに再び注力する方針でしたが、水を差された形になっています。

一方、ビール類で好調なのはキリンビールの「本麒麟」やサントリービールの「金麦」などの第3のビールです。チューハイもよく売れていますが、ビールに比べると利幅が薄く、そこまで儲けにはつながりません。節約志向は当面続きそうなので、ビールに強みを持つアサヒはここでも苦しい戦いを強いられることになります。

とはいえ、この巣ごもり消費はいつまでも続くものではありません。緊急事態宣言も明け、在宅勤務を続ける人もいますが、元の生活に戻っている人もいます。20年4、5月は異例の状況で、今後これがどうなるかは、どのメーカーも見通せていません。新しい日常がどうなるのか、それがもう少し見えてこないと、各社とも新しい戦略を打ち出せないと思います。

ただ、今後も定着していきそうな傾向としてあげられそうなのは「朝食需要」の盛り上がりです。これまで「朝は忙しいので食事を取らない」という人が一定数いましたが、朝の通勤がなくなったことで「しっかり朝ごはんを食べる」人が急増しました。出社する人も増えましたが、1度定着した習慣はそう簡単には戻らないものです。さらに健康志向の高まりもあるので、ヨーグルトやパンなどの朝食向けの商品ラインアップを持つメーカーは大きなチャンスを迎えているといえるでしょう。

(構成=衣谷 康)
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