組織はフラット化するべきだという考えが主流になっていますが、成功する組織には、ある程度の階層は必要ではないでしょうか。デービッド・ジオネット(カナダ・トロント)
それ以上踏み出してはいけません!いま、あなたは、おそらく他のどんな天災よりも多くのマネジャーや企業を躓かせてきた「転びやすい坂」の一歩手前におられます。「いいじゃないか、もう一つ階層を増やしたって痛くも痒くもないよ」という、あの坂です。
階層を押し込もうとする組織の衝動は、毎年訪れるハリケーンのような天災にも似たもので、与える被害もまたハリケーンに劣らず甚大でありえます。唯一の違いは、階層は防げることです。また、防がなければなりません。
その理由は、まず第一に、階層はあらゆることをスローダウンさせます。意思決定にしても、階層が多ければ多いほど、承認印をもらわねばならない相手が多くなります。承認印の前に、上司に対して、さらにはそのまた上司に対して行わなければならないプレゼンテーションが多くなります。
また、階層はただでさえ難しいコミュニケーションを子どもの伝言ゲームのようにしてしまいます。情報が次の人に伝えられるたびに歪曲や解釈や余分な情報が加えられるのです。
さらに、新規事業を始めることにしても、階層はとりわけ大企業の中では新規事業を山ほどの官僚的手続きの下に押し込んで、新事業の成功に必要な酸素と日光を奪ってしまいます。
階層の最悪の産物はおそらく「おせっかい」でしょう。階層が多いということは、管理職の直属の部下がきわめて少ないということです。彼らは余ったエネルギーを何に使うでしょうか。
あれこれと部下の世話を焼くことになるか、もっとひどい場合には部下の仕事を代わりにやることになるのです。それが部下の士気と自発性を損なうことは言うまでもありません。
あなたのなすべきことは階層と戦うことです。事業や会社が成長しているときは、階層が必要であるかのように思いがちです。
「売り上げが増えたじゃないか。現場に地区マネジャーを増やしたほうがいいね」とか、「社員が増えたって。じゃあ、本社にいくつかポジションを増やしたほうがいいね」となるわけです。
皮肉なことに、成長がないときでも、企業は階層を増やさねばならないと感じることがあります。この手の階層の追加は往々にして、「ここではまだ昇進のチャンスがありますよ」といわんばかりに、昇進という衣をまとっています。このような昇進は昇給は伴わないけれど、何もないよりましではないか、という意見があります。
その考え方は、間違っています。
では、階層については何が正しいのでしょう。あなたが「心地悪い」と感じられたら、それが正しいレベルだと思ってください。つまり、あなたの望まれるレベルの半分に階層を減らしたら、適切なレベルになるのです。
マネジャーは直属の部下を少なくとも8人、シニアマネジャーなら12人、持つべきです。CEOはさらに大勢持つべきです。組織の上にいる人ほど、直属の部下を多く持つべきです。