中学受験が持つ、リアリティと愛おしさ

私の勤務校は、東京の私立です。中学校は義務教育ですので、受験しなくても、公立の中学校に行くことは保障されています。わざわざ中学受験を、わが子にさせているご家庭のおかげで、中学受験という世界は成り立っているともいえます。

教育熱心な層が多いと言われる東京の23区内でさえ、中学受験をする家庭は、少数派です。そもそも、12歳で、子どもの何かが決まるわけではありません。中学受験をするということは、一定の条件を満たしたご家庭にできるチャレンジの機会で、うらやましいことではないでしょうか。

一生懸命がんばることの大切さ、にもかかわらず第一志望に合格できるとは限らない現実に対する、リアリティと愛おしさを共有するための中学受験にしてほしいと思います。

のんきなことを言っていると思われているだろう私も、中学受験を支援できる方法を考えています。そもそも、12歳をひとつの「もの差し」ではかるという発想を変えました。

オンリーワンの「学習歴」をまっすぐ評価する入試

従来、中学受験科目とは、算数・国語・理科・社会の4科目が伝統的なスタイルでした。今世紀に入ってから、公立中高一貫校が誕生し、適性検査型入試が行われるようになりました。こうした入試方法に対応する力を身につけるために、学習塾にかよう小学生がいます。

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学習塾で学ぶ子どもたちのたいへんさと健気さ、保護者の切ない思いは、知っているつもりです。一方、それだけが、12歳の「学習歴」だろうか、と思います。子どもが自分でつくりだした「学習歴」を、まっすぐに評価してくれる学校があったら、嬉しいと思う受験生やご家庭は、たくさんあるはずだと思います。であれば、その入試を設定してみようと思いました。

結果、現在10種類の入試方法を実施している中学校となり、「日本一入試方法の多い中学校」を自認しています。特に、オンリーワンの「学習歴」を、「聞いて、聞いて!」と語る12歳にめぐり会いたいからつくりだした、「プレゼンテーション型入試」があります。

チャレンジしなければ、結果はないし、結果について考える成長のステップや葛藤もありません。だから、私は、プレゼンテーションのチャンスを、マイクを握るチャンスを、せめてご縁のあった子どもたちに、提供したいと思っています。

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