ニューヨーク・タイムズが報じた米国FAXの現状
ニューヨーク・タイムズの記事「Bottleneck for U.S. Coronavirus Response: The Fax Machine」によると、ヒューストンのハリス郡公衆衛生局には数百枚に及ぶ検査結果がFAXで送られてきて、大量の用紙が床に散乱しているような状況だといいます。同局はこれまでに4万人超の感染者情報を受け取ってきたというのです。
IT大国の米国においても、コロナ禍における感染情報を適切に処理ができていません。感染経路の特定に使用するためのデータ収集について、一部こそ処理に適切なデータで届くのですが、FAXをはじめ、電話、手紙、Eメールなどさまざまなフォーマットで「不完全なデータ」として日々、送信されているのが現状だというのです。
新旧のテクノロジーが混在し、疫学者の要求を満たさないデータ基準で、感染者の住所や電話番号など個人情報の抜け、報告書の重複、管轄の異なる保健所への発送などごちゃまぜのデータを処理できないのが米国の衛生局での状況です。
「検査データ収集」が目的化してしまっている
もはや、日々加速する感染速度に正確なデータ収集がまったく追い付いていません。ワシントン州は州兵を25人派遣してデータの入力にあたっていますが、同記事の衛生局では必要な情報がそろうまでに平均して11日も要しており、「検査データ収集が目的化して、収集したデータの活用が見えなくなっている」とアメリカ疾病対策センターの元所長、トーマス・フリーデン氏は頭を抱えています。
米国の感染者数は日本とは比較にならないほどですから、現場の混乱の状況は日本以上のものと推測されます。皮肉なことにワシントンのスミソニアン博物館に展示されたFAXが、米国でも現役選手としてコロナ感染者の把握のために日々活躍しているのです。
さて、「日本では感染者数をFAXで報告する」という日本のITの発展状況を嘆く声がネットなどから聞こえてきますが、日本のコンピューター技術は世界的に見て、決して低くはありません。