習近平によるウイグル人の弾圧

かねてウイグル人に対する弾圧や迫害は当事者からの告発の形を含め、日本でも伝えられてきた。世界ウイグル会議議長を務め『ウイグルの母 ラビア・カーディル自伝 中国に一番憎まれている女性』(ランダムハウス)などの著者があるラビア・カーディル氏もたびたび日本を訪れ、自身やウイグル人に対する中国の仕打ちを日本社会に訴えてきた。

2008年、2009年には「ウイグル騒乱」と呼ばれる反政府活動が活発化。当局の施策に対する不満からこうした現象が起きる時点で弾圧は強まっていたわけだが、当時はまだ「事件を起こさせる」余地があったともいえる。2012年に習近平が国家主席になってからは、よりシステマチックでえげつない弾圧が行われるようになった。

2013年にはウイグル人とされる犯人が、中国当局から「分断・独立を企図するテロ組織」と指定されている「東トルキスタン・イスラム運動」の指示で天安門に車両で突っ込んだ、とされる自爆的テロ的な事件も発生した。この事件はウイグル人弾圧の口実としたい当局による自作自演という指摘もあり、そうであるならばいよいよナチスドイツの「国会議事堂放火事件」を連想せざるを得ない。

日本、アメリカでもウイグル弾圧への関心が高まる

2000人から3000人ほどいるといわれる在日ウイグル人や、日本に帰化した元ウイグル人らも、折に触れて窮状を訴えてきた。だが、大手メディアで大々的にウイグルの惨状を取り上げるようになったのはつい最近のことだ。

アメリカでも、いわゆる「人権派」による中国のウイグル弾圧を非難する声はそれほど大きなものではなかった。

だがここへきて、「中国の真の姿」をようやく目の当たりにしたのか、アメリカでもウイグル人に対する圧制への注目が高まっている。今年6月には米国議会で「ウイグル人権法」が成立。ウイグル自治区を治める中国高官ら4人の資産凍結などを行う決定を下した。駐日アメリカ大使館の公式ツイッターも、中国当局によるウイグル人迫害を非難する動画や、ウイグル系米国人弁護士を紹介するなど、中国非難の度合いを強めている。

このように、「巨悪=ナチス」であり、ナチスドイツのファシズムと戦って勝ったことが第2次世界大戦の功績として国家の功績とみなされているアメリカでも、ようやく中国でヒトラーの悪事に匹敵する事態が行われていることが広まりつつある。