中国の「人道に対する大罪」を見過ごしてはいけない
その最大の理由は、ユダヤ人収容所を連想させるウイグル人収容施設の存在だろう。かねて中国当局は「中国語を教え就職支援をするため」などと施設の目的を語ってきたが、ウイグル人関係者は「宗教を捨てさせ、中国色に染め上げる虐待洗脳施設」だと批判してきた。関係者からもたらされる内部の情報はにわかには信じがたい、筆舌に尽くしがたいものだったが、近年はこうした施策が報道にも載るようになってきた。
それどころではない。まさに「ヒトラーのユダヤ人絶滅政策」に匹敵する事態も報じられている。『NewsWeek』オンライン版によれば、中国当局はウイグル人女性に避妊手術を強制し、民族の絶滅計画をいままさに実行している最中なのである。少し前までは「ウイグル人男性は安い労働力でこき使われ、ウイグル人女性は漢民族と半強制的に結婚させられ、文化的、あるいは民族的に消されつつある」と言われていたが、より反人権的な政策に及んでいるのである。
もちろんアメリカとて、人種差別問題を抱え、さらにはアブグレイブ刑務所での捕虜虐待など、人権の面から強く批判されてしかるべき行いをしてきたことは確かだ。だが、それをもって中国の行状を見過ごす理由にはならない。どちらも批判しなければならないのだ。
かつて日本はナチスドイツの行状を把握できず、同盟を組んでしまった。国内の「小ヒトラー」批判もいいが、かつての歴史を反省するならばなおのこと、現在進行中の中国の「人道に対する大罪」を見過ごすべきではない。