日本赤十字社が漫画『宇崎ちゃんは遊びたい!』を起用した2019年のポスターは、一部から「セクハラ」と批判され、第2弾では図案が大きく変更された。東京大学教授の瀬地山角氏は「性的なものが必ずしも女性蔑視になるわけではないが、PRする対象と場所によってはセクハラにもなり得る」と指摘する――。

※本稿は、瀬地山角『炎上CMでよみとくジェンダー論』(光文社新書)の一部を再編集したものです。

愛知県独自の「緊急事態宣言」が発令され、人通りの少なくなった中、献血を呼びかける男性=2020年4月11日、名古屋市中区
写真=時事通信フォト
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見かけなくなったキャンペーンガール

日本では水着のグラビアやヌード写真などが掲載された男性誌やスポーツ新聞を、駅の売店でふつうに購入することができます。ですがこれが許容されるのは、世界的に珍しいことだと考えるべきだと思います。アメリカなら怪しげな特別な店に行かないと手に入れることはできません。2020年に予定されていた東京オリンピック・パラリンピックを前に、大手コンビニチェーンは成人向け雑誌の販売を原則中止しましたが、今後こうした流れは広がっていくでしょう。

かつては化粧品メーカー、飲料メーカーなどさまざまな企業が、水着キャンペーンガールを自社の宣伝やPRに起用していました。大手繊維メーカーのキャンペーンガールは、モデルや女優の登竜門ともいわれ、毎年話題になってきました。しかしある時期から、キャンペーンガールという宣伝方法そのものをやめる企業や、水着の着用をことさらアピールしない企業も多くなっているようです。

水着の女性の写真やポスターは昔から性的な存在として流通していました。そして、社会に幅を利かせていたおじさん層のおかげで、ふつうにあるものとして許されていたわけです。しかし、水着の女性を取り上げる雑誌は読者とともに年をとり、新しい雑誌も生まれてこなくなりました。ネットという新たな場ができたわけですが、そこでは雑誌だったら起きなかった問題──「見たくない人は見なければいい」というルールが通用しなくなるという問題を抱えることになります。受け手もメディアも変わり、情報の均衡点が変わったわけです。