炎上した日本赤十字社の献血ポスター
日本赤十字社は若い世代へ献血を募るために、漫画『宇崎ちゃんは遊びたい!』とコラボをし、献血協力者に主人公の女性「宇崎ちゃん」をデザインしたクリアファイルを配布するというキャンペーンを展開します。
発端は2019年10月14日、アメリカ人男性が東京・新宿東口駅前の献血ルーム前に掲示されていたキャンペーンポスターを見て、ツイッターで問題提起。2日後、それを引用する形で太田啓子が「日本赤十字社が『宇崎ちゃんは遊びたい』×献血コラボキャンペーンということでこういうポスターを貼ってるようですが、本当に無神経だと思います。なんであえてこういうイラストなのか、もう麻痺してるんでしょうけど公共空間で環境型セクハラしてるようなものですよ」とツイートし、大きな炎上案件に。
I admire the work the Red Cross does, which is why I’m disappointed that @JRCS_PR in Japan would run a campaign using the over-sexualized Uzaki-chan. There’s a time & a place for this stuff. This isn’t it. #women #metoo #kutoo pic.twitter.com/bhds7IPPTq
— Unseen Japan @ BLM だよ (@UnseenJapanSite) October 14, 2019
性的表現=女性蔑視なのか
まず、議論の出発点で確認しておきたいのは、性的であることが必ずしも女性蔑視であるとは限らないということです。自ら性的なメッセージを発したい、もしくはセックスワークに従事したいと考える女性もいて、それが自由な意思に基づいていれば、それ自体が否定されることではありません。個人が性的である、性的情報を発信する主体となる自由は守られるべきです。当然ですが、そこに強制がないことが前提です。
次に何をもって「わいせつである」「性的である」といえるのでしょうか。ここには刑法175条のわいせつ物頒布等の罪をめぐるポリティクスと、セクシュアルハラスメントの一類型である環境型セクハラが関係しています。
まずわいせつ物頒布等の罪における、「わいせつ」という概念について見てみましょう。これは時代によって大きく変わっていくものです。イギリスの小説『チャタレイ夫人の恋人』の日本語訳本がわいせつ文書かどうかで争われたのは1950年。マルキ・ド・サドの『悪徳の栄え』の裁判が起きたのは1959年。さほど大昔のことではなく、日本では戦後になってもつい数十年前までは、文字で書かれた性的表現でもわいせつとされ、認められないケースがあったのです。