どうせならヨガとかやればいいのに

「昼休みにラジオ体操をやってると、同僚や後輩が笑うんです。『なんでそんなオッサンくさいことやってんの』『どうせならヨガとかやればいいのに』って。本当にうっとうしいというか」

情景を思い浮かべると、A氏が立腹する気持ちも理解できるが、ここで気になるのは、ラジオ体操のエクササイズとしての有効性だろう。なにせ、同体操が制定されたのはおよそ90年前(!)。あまりに時代遅れだし、効果もさほど期待できないのでは?

疑問に答えてくれるのは、ラジオ体操に関しての著作がある、医学博士の戸田佳孝先生だ。

「ラジオ体操って運動というよりはストレッチなんです。だから、サラリーマンの方が仕事の合間にやるのはすごくいいと思いますよ。特に肩こりなんかには効果があります」

意外な答えが返ってきた。もう少し詳しく解説していただこう。

「筋肉って寝てる間は動かせないでしょ。その意味で、朝一番のラジオ体操はすごく体にいいんです。ストレッチのほかにリラックス作用もあるから会社の昼休みにやると効果的です」

とはいえ、ラジオ体操は必ずしも万人向けではないと先生は指摘する。

「65歳以上の高齢者にはあまりオススメしません。というのもラジオ体操は本来、若者向けに考案されたものなんです。筋肉が硬く、量も少ない高齢者は膝や腰を痛める可能性があります。やるならむしろ筋トレを推奨します」

高齢者に愛好者が多いラジオ体操の現状を踏まえれば、皮肉な結果というほかない。が、少なくともビジネスパーソンには効果アリといえそうだ。

というわけで、戸田先生の見解をA氏に伝えると、うつむいてしまった。聞くと最近、「同志」と呼ぶ高齢のラジオ体操仲間ができたそうだ。

「うちの社内取締役です。僕がラジオ体操をしている姿を面白がってくれて、一緒に体操をするようになりました。社内で力のある人だから、同僚に笑われることも少なくなりました。ただ、67歳なんです……。膝や腰を悪くしてまで付き合ってもらうのは、さすがに忍びない。でも、1人でラジオ体操をしてまた笑われるくらいなら、いっそやめてしまおうかと」

その後、A氏は昼休みのラジオ体操を独りで続けているが、同志が加わる前は散々バカにしてきた同僚も静かに見守っているという。A氏の「同志ロス」が社内に広がり始めた。

戸田佳孝(とだ・よしたか)
戸田リウマチ科クリニック院長
1986年関西医科大学卒業。98年戸田リウマチ科クリニックを開院。『1日半分のアボカドでひざの痛みはラクになる』(河出書房新社)など著書多数。
(写真=PIXTA)
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