笑いに秘められたパワー
「笑いが健康にいい」という話を、耳にしたことは多いだろう。
人類が初めて笑いの治癒力に注目したのは、医師や薬品の研究者ではなく、アメリカ人ジャーナリスト、ノーマン・カズンズ氏のある実験がキッカケだった。
難病で知られる硬直性脊椎炎を患っていた彼が、病気の治療に“笑い”を取り入れたところ、症状が劇的に改善、わずか数カ月で職場復帰を果たすまでに回復したのである。
治癒率500分の1といわれる難病を、笑いの力で克服した彼は1915年に生まれ、75歳まで生きた。
彼の体験がもとになって、世界の医学界はこぞって笑いの治癒効果の研究を開始。その結果わかったのは、笑いが体内のNK(ナチュラル・キラー)細胞を活性化する事実だ。
NK細胞は、がん細胞やウイルス感染細胞など、体に害をなす細胞への攻撃の役割を担っている。NK細胞の活性化とはすなわち、免疫力の増加を意味する。
笑いに秘められたパワーはこれだけではない。関節リウマチの症状緩和、血糖値の上昇抑制などさまざまな医学的効果が確認されている。なかでも特筆すべきは、大阪国際がんセンターが行った実証研究の成果だろう。
複数のがん患者に漫才や落語を見せたところ、免疫力を高め、がん抑制作用を持つタンパク質のIL(インターロイキン)‐12Bを出す能力が30%増加したのだ。