東京・歌舞伎町のホストクラブで新型コロナウイルスへの感染が相次いでいる。そうしたホストクラブでは客の多くが風俗嬢だという。彼女たちはなぜ体を売ってまでホストに通うのか。ノンフィクション作家の中村淳彦氏が取材した——。(第1回/全3回)

※本稿は、中村淳彦『新型コロナと貧困女子』(宝島社新書)の一部を再編集したものです。

シャンパンタワー
写真=iStock.com/Y_Hirosan
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コロナ禍でも大盛況な場所がある

「中村さん、新刊の取材ですよね? Tビルに行きます? すぐそこですよ」と鈴木樹里さん(仮名・20歳)が言いだした。

彼女はホスト狂いの現役女子大生であり、東京六大学に在籍する大学3年生だ。大学1年生の夏休みに高級ソープ嬢になって、月に100万円単位のお金を稼ぐようになった。そのお金をほぼ全額、歌舞伎町のホストクラブに注ぎ込む破天荒な女子大生だ。

東京都には緊急事態宣言下で外出自粛要請が出ている。しかし、彼女のような人種には強制力のない外出自粛要請は関係がない。担当ホスト(指名するホスト)が出勤するので歌舞伎町に来たという。担当ホストの出勤まで1時間以上あるようで、時間を潰したいようだ。

Tビルは歌舞伎町で有名な自殺の名所だ。ホスクラ客の若い女性が続々と飛び降り自殺をしている。

もっともひどかったのは、2018年の秋で、9月23日、10月4日、10月5日と立て続けに若い女性が飛び降り自殺、自殺未遂騒動を起こしている。Tビル前のアスファルトは血で染められ、2基あるエレベーターの左側は女性の霊がいるという噂までである。

「ホスクラの客は稼いでなんぼ、お金を落としてなんぼだから、ほとんど風俗嬢とキャバ嬢です。風俗嬢のほうが圧倒的に多いですね。やっぱりホストはカッコいいし、チヤホヤされる感じは楽しい。それと、お金を使ってほかの女に勝つみたいな。比較対象がある喜びかな」

ホストクラブはお金がかかる。若い女性のほうが圧倒的に稼げるので、客は10~20代前半がメインとなる。