6月16日、北朝鮮南西部・開城(ケソン)に設けられた南北共同連絡事務所を、北朝鮮が爆破した。これに先立って金与正(キム・ヨジョン)朝鮮労働党第1副部長は、脱北者団体による体制批判ビラの散布に不快感を示していた。だがジャーナリストの宮田敦司氏は「ビラの散布は以前から行われていた。今回の強硬姿勢の背景には、韓国からの経済支援を獲得したいという狙いがある」と指摘する——。
北朝鮮との国境に近い韓国・坡州(パジュ)の軍事監視所で軍用車両に乗り込む韓国陸軍兵士たち、2020年6月19日
写真=AP/アフロ
北朝鮮との国境に近い韓国・坡州(パジュ)の軍事監視所で軍用車両に乗り込む韓国陸軍兵士たち、2020年6月19日

体制批判ビラに不快感を示した北朝鮮

北朝鮮の強硬姿勢がエスカレートしている。背景には何があるのだろうか。筆者は北朝鮮が韓国からの経済支援の獲得を焦っているためだとみている。そこで本稿では、過去の左派政権である金大中(キム・デジュン)政権(1998~2003年)と盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権(2003~2008年)の対北朝鮮政策を振り返ってみたい。

6月4日、金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長の妹の金与正(キム・ヨジョン)朝鮮労働党第1副部長が談話を発表した。脱北者団体による体制批判ビラの散布に不快感を示し、韓国当局がなんらかの措置を取らない場合、2018年9月の南北首脳会談の際に締結した韓国との軍事合意を破棄する可能性もあると警告した。

この合意は、南北間の敵対行為中止や幅4キロメートルにわたるDMZ(非武装地帯)の「平和地帯」への転換など6つの項目で構成される。具体的なプロセスや対象範囲を記した付属書も付いて、計24ページに上っており、事実上の南北統一を志向したものといえる。