左派も中国への圧力強化を求める理由

また、中国に対するアプローチも共和党・民主党政権では当然に異なるものとなる。トランプ政権は中国の人権侵害に対して宗教弾圧を重点的に取り扱う傾向がある。ファーウェイやハイクビジョンをはじめとした中国企業に対する制裁は外交・安全保障の観点だけで行われているものではない。それらの企業技術が宗教迫害に使用されることに対し、トランプ政権の支持基盤である宗教団体が強い懸念を示している影響は極めて大きい。宗教団体の信仰心という下支えが無ければ、トランプ政権が中国との経済の相互依存関係を見直すことは現状よりも困難を極めただろう。ただし、この福音派の信仰心は対中政策に強いエネルギーを注ぎ込みつつも、中東方面などで火が付いた場合は容易に対中政策の強度を弱める方向にも左右する可能性も含んでいる。

一方、民主党政権は宗教迫害だけでなく、あくまでも中国共産党の行為を民主主義のイデオロギーに対する挑戦として位置付ける傾向がある。そのため、トランプ政権よりもバイデン政権は異なる宗教を背景とした民主主義諸国とも連携が組みやすいという特徴を持っている。民主党の支持基盤はそれらのイデオロギーを支持する人権団体などによって中核が占められている。

バイデンが勝つと、権威主義国に対し多正面作戦を強いられることに

しかし、逆にバイデン政権ではサウジ、北朝鮮、ロシアなどの権威主義的な政治体制を有する国との対話は極めて困難なものとなる。そのため、バイデン政権がイラン核合意の復活によって中東情勢を表面上安定化させたように見えても、対サウジ関係悪化をはじめとした新たな火種を中東にばらまき、東欧ではロシアとの対立に過剰なリソースを割かざるを得なくなるだろう。バイデン政権は世界中で権威主義国及び情勢不安地域に対して多正面作戦を強いられることになる。表面上の外交カードはトランプ政権よりも多いが、その反面として外交・安全保障上のリソースを中国に集中させることは困難になるかもしれない。

また、逆の可能性も考慮する必要がある。ネオコンなどの過激な勢力も加わりやすいイデオロギー政策であるため、彼らの非妥協的な性質によって対中政策が抜き差しならない方向に進展してしまうことも懸念される。トランプ政権は政策決定からネオコンを締め出しており、中東で用済みとなった彼らが対中政策の文脈でバイデン陣営に加わる可能性は十分にある。

このように、米中関係の中長期的な展開を正確に捉えるためには、トランプか、バイデンか、というポイントは極めて重要である。カールフォンクラウゼヴィッツの戦争論を読むまでもなく、まさしく「戦争は政治の延長」であり、政治の延長に安全保障にあるに過ぎないのだ。

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