経済が永い停滞状態に入ると、大衆の関心は不道徳の糾弾に向かう

渡部建氏の不倫・乱痴気騒ぎ(?)というものがこれほどテレビを騒がせるという事は、ようやく大メディアもコロナ一色の雰囲気から解放され平時に戻りつつあるという事で、逆説的に大変歓迎するべき事態である。ようやく社会がその平常化の兆しを見せているという事だ。

「2014年度ジョージア魂賞」の表彰式で司会をするタレントの渡部建さん(東京都港区のグランドプリンスホテル高輪)
「2014年度ジョージア魂賞」の表彰式で司会をするタレントの渡部建さん(東京都港区のグランドプリンスホテル高輪)=2014年11月27日(写真=時事通信フォト)

して、同氏に関する騒動の発端になった週刊文春の当該号を、目を皿にして読んでも、私にはこれの何が悪いのか一向に分からなかった。これだけでは参考資料としては足らないので、同氏の刊行しているいわゆる「グルメ本」を2冊読んだ。若干鼻につく部分はあるものの、どれも毒にも薬にもならぬ内容で、特段指弾されるような内容ではない。

社会から経済成長が無くなり、永い停滞状態に入ると、大衆の関心は不道徳への糾弾に向かう。宗教改革が始まる以前の中世ヨーロッパがまさにこの停滞の世紀であった。小氷期で生産力が減退し、人口増加が止まる。この時期に西ヨーロッパ(現在のドイツ、フランス領域等)で苛烈を極めた魔女狩りは、キリスト教社会で不道徳と見做された女性に向かった、と思われがちだが実際には処刑の対象には男性も数多く含まれていたのは有名なお話である。