渡部建へのバッシングと魔女狩り

そして実際の宗教裁判では、「魔女集会に参加していたのを見た」などのトンデモな告発を根拠として拷問がなされ、大体において苛烈な苦痛に耐えきれず「魔女です」と被疑者が自白することにより決定的な有罪(極刑)が宣告されていたのである。だがこの告発の実態は、当然魔女集会を見たものなど存在しないのだから、多くは村落共同体内部における同性等からの嫉妬や怨嗟が原因であったと推察されている(森島恒雄著『魔女狩り』岩波書店)。

日本では特に1997年以降、深刻なデフレーションが続き経済が停滞している。この間、名目GDPは全く増加しておらず、ひとり頭GDPはOECD下位グループに転落した。総人口は2008年をピークに減少に転じ、出生率は下げ止まっているがそれを自然減が大きく上回る状態が継続されている。停滞を続けた中世欧州と、平成中盤以降の日本は、この部分で大きく似通っている。

私は数年前『道徳自警団がニッポンを滅ぼす』(イーストプレス)を上梓した。この本の中で、なぜ大衆は不倫に敏感に反応し、微細な不道徳に目くじらを立てる(道徳自警団)ようになったか―という原因を上記のように社会全体のゼロ成長及び停滞が決定的要因である、として結論付けている。経済成長が続いている自由国家では、経済全体が拡大し続けるので、大衆は目先の功利や損得勘定に躍起となり、功利に直接関係のない不道徳の部分は軽視される。仮に不道徳が存在してもそれが実益に関係なければ社会の中で軽視されるのは当然のことだからである。

なぜブラピを略奪した米国女優が国連親善大使に…

例えばアンジェリーナ・ジョリーはジェニファー・アニストンの夫であるブラッド・ピットを略奪した。これは立派な不貞であり不道徳だが、アンジーは国連親善大使になってハリウッドから追放される気配はない。おおよそ俳優が業界から除名同然になるのはヘイトスピーチ等を筆頭とする差別言動によるものであるなど、O・J・シンプソンのように元妻らを射殺したなどの歴とした刑事事件で起訴され、有罪が確定した場合である(O・Jの場合は刑事で無罪、民事で有罪)。

政治家の世界にあっては、イタリアのベルルスコーニ首相は未成年者も参加した乱交パーティー疑惑や様々な性的スキャンダルがあったが、首相辞任は無かったどころか、何度も宰相に返り咲いた。ビル・クリントンは世界を騒がせたホワイトハウス実習生、モニカ・ルインスキーとの不倫行為疑惑で精液のDNA鑑定までなされ、下院で弾劾発議されたが上院では否決された。それどころか90年代アメリカ繁栄の礎を築いた大統領として今でも評価が高い。