韓国政府が一方的に決めた、5月末の期限

この流れの中で、日本は実際の韓国の運用状況を見守る必要があるとして輸出管理の撤回には応じず、対話を進めてきました。しかし、韓国政府が一方的に決めた2020年5月末の期限を迎え、WTOへの提訴手続き再開を主張しているのです。この流れを見ても、韓国は、日本の輸出管理強化に取り乱し、右往左往を一人で続けています。

WTOの再提訴について、茂木敏充外相は記者会見で、「輸出管理当局間で対話が継続してきたにもかかわらず、韓国側が一方的に発表を行ったことは遺憾だ」と発言。「輸出管理の見直しは、その運用実態に基づいて行われるべきだとの考えに変わりはない」と述べています。

これ程までに、韓国が右往左往しているのは、スマートフォン産業など半導体業界での打撃です。半導体は、韓国の輸出総額の2割を占める主力産業で、経済への深刻なダメージが避けられないのです。規制された材料は、半導体やテレビ用の有機ELパネルの生産に使われます。半導体や有機ELパネルは、スマートフォンやテレビ、パソコンなどの最終製品の中に組み込まれます。そこまで含めると、韓国の輸出総額の4割近くに影響が及びます。

韓国は、なぜ日本に半導体材料を依存しているのか?

ここで、疑問が浮かび上がります。韓国にとってそれだけ重要な半導体材料をなぜ、日本からの輸入に依存しているのでしょうか? ここをひも解くと、韓国経済の基盤の弱さが露呈します。

韓国貿易協会によると2018年の韓国で生産される半導体の輸出額は1267億ドルで、輸出総額の21%を占めています。その半導体の製造に必要な材料を日本からの輸入に依存してるのです。

2019年のJETROの「貿易量で見る韓国半導体産業の日本依存度」のデータによると、韓国貿易協会が2019年7月2日に「日本半導体素材輸出規制関連統計」を発表しており、輸出審査が必要となる3品目(レジスト、フッ化水素、フッ化ポリイミド)について、2019年1~5月のレジスト、フッ化水素、フッ化ポリイミドの対日輸入依存度は、それぞれ91.9%、43.9%、93.7%だったことを公表しています。特に、レジストは、JSRや東京応化工業、住友化学など日本勢の独占状態です。

一方、日本のレジスト、フッ化水素、フッ化ポリイミドの対韓輸出依存度を見ると、19年1~4月基準でそれぞれ11.6%、85.9%、22.5%でした。日本は韓国への輸出依存度はそれほど高くないのです。フッ化水素は韓国への輸出依存度が85.9%と高いものの、レジストはアメリカ向けが21.8%、フッ化ポリイミドは中国向けが36.3%と、アメリカ・中国への輸出の割合が高いのです。