中国を戒め、国際社会に日本の存在感を示す必要がある

産経社説は「ポンペオ米国務長官は国家安全法について声明を出し、『香港の自治と自由を根本的に損なう。自治を否定する中国共産党体制と戦う香港の人々を支持する』と述べた」とアメリカの明確な対応を評価した後、安倍政権に注文する。

「菅義偉官房長官は『国際社会や香港市民が強く懸念する中で採択されたことやそれに関連する香港情勢を深く憂慮する』と述べた。安倍晋三首相自身が明確に撤回を求める必要がある。首相は、来月米ワシントンで開かれる先進7カ国(G7)首脳会議で最優先課題として取り上げるべきだ(※)

※編集部註:トランプ米大統領は5月30日、ワシントンで6月中の開催を目指していたG7サミットを9月以降に延期する意向を明らかにしている。

沙鴎一歩はこの産経社説の提案に賛成だ。ここで日本が主張しなければ、今後の国際社会での日本の活躍の場はなくなるだろう。

最後に産経社説はこう結ぶ。

「習近平指導部は台湾にも一国二制度による『中台国家統一』を訴えてきた。台湾にとって認められないばかりか、香港の現状が台湾の将来となりかねない。中国は香港への国際公約を完全履行し、態度で示さねばならない」

要は、香港の問題は国際社会と中国の戦いなのである。日本はG7などの場で中国を戒め、国際社会に日本の存在感を示す必要がある。

香港の自治を奪う法制化への抗議のどこが問題なのか

読売新聞の社説(5月29日付)は半本と産経社説に比べて小さいが、「香港国家安全法 一国二制度を踏みにじるのか」との見出しを付け、やはり中国政府を批判する。

「香港の憲法にあたる基本法は、言論や集会、デモの自由を保障する。香港政府が国家安全法を制定するとも定めている。2003年に法制化を図った香港政府は、住民の強い反対で撤回した」
「中国が香港の頭越しに法制化を進めることは、『一国二制度』の否定につながろう」

香港は外交と防衛以外の高度な自治が認められている。中国が香港の旧宗主国イギリスと約束したからである。すなわち、国際社会が香港市民の自由を保障しているのだ。それを一方的かつ強硬に国家安全法の制定を進めるのはどう考えても理不尽である。中国はアメリカの批判や対応を「内政干渉だ」とクレームを付けるが、国際社会で認められた香港の自治を奪う法制化への抗議のどこが問題なのか。

読売社説は「香港では9月に議会選挙が行われる。中国が法整備を急ぐのは、中国に批判的な民主派の動きを封じ込める狙いだろう」と指摘したうえで、最後に主張する。

「習近平政権は、コロナによる経済の失速で、難しい舵取りを迫られている。香港への締め付けで求心力の回復を図るよりも、米国との衝突を回避し、中国経済の再生に専念することが必要だ」

習近平政権はその足元に火が付いているのは間違いない。読売社説が主張するように経済の再生に力を注ぐべきだ。「世界の工場」「世界第2位の経済大国」とまで言われる成長を遂げた中国経済が世界に与える影響力には、計り知れないものがある。

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