かつての日本にあった「治安維持法」と同じだ

ソ連や東ドイツ、ポーランドなどかつての社会主義国家はいずれも崩壊して民主化の道を選択した。しかしながら中国は民主化の道を歩むどころか、一党独裁体制をさらに強化している。特に「一帯一路」の戦略で世界制覇をもくろむ習近平政権の言動は目に余るものがある。

繰り返すが、民主化を実現しない限り、これからの中国には未来はない。

5月29日付の産経新聞の1本社説(主張)は、全人代で可決された問題の国家安全法制を見出しで「香港抑圧法」と酷評し、冒頭部分でまずこう指摘する。

「政権転覆などを禁じた国家安全法を制定するためで、全人代常務委員会が法を制定し、8月にも香港で施行される」
「決定事項には、国家分裂や政権転覆とみなされる行為を主に処罰する規定が明記された。施行後は香港の平和的なデモ活動や反政府集会、共産党批判の報道や出版なども摘発される」

産経社説が指摘するように「政権転覆」の動きを封じ込める法制であることは間違いない。かつての日本にあった「治安維持法」と同じだ。

中国政府のやり方は「許しがたい暴挙」そのものだ

産経社説は訴える。

「香港に高度な自治を保障する一国二制度を踏みにじるものだ。『香港抑圧法』であり、断じて容認できない」

その通りで、日本をはじめとする国際社会は決して認めてはならない。

産経社説は一国二制度について「中国の主権の下に本土側で社会主義を、香港側で民主主義や資本主義を残す世界でもまれな政治制度だ」とし、「中英両国が1984年に調印した香港返還のための『中英共同声明』は国連事務局に登録され、その後発効した。声明の柱である一国二制度の保障は、国際条約にも準じる国際公約である。英国から中国に返還された97年から50年間にわたり約束されており、一方的な反故は許されない」と説明したうえでこう訴える。

「返還時に制定された香港の基本法(憲法に相当)の規定で、中国の法制を香港に適用するには香港議会での議決が必要である」
「だが、国家安全法は北京の決定が先行し、頭越しに香港に適用する初のケースとなる。民主主義に基づく香港の法治を根底から覆す手法で、許しがたい暴挙だ」

中国は香港議会の承認を数の力で押し切るつもりなのだろう。しかし議会の構成は中国の傀儡かいらいとなっている香港政府に有利な構造となっている。そこが問題なのである。そして中国政府のやり方は産経社説が批判するように「許しがたい暴挙」である。