旧宗主国のイギリスは「香港市民を受け入れる」というが…
まずは香港の旧宗主国のイギリスが立ち上がり、国際世論をリードすべきだ。だが、イギリスは二の足を踏んでいる。香港への国家安全法制度導入について中国を牽制しているが、アメリカのドナルド・トランプ政権のように正面からの対決は避けている。
たとえばイギリスのボリス・ジョンソン首相は6月3日、英タイムズ紙に「中国が国家安全法制度を導入するというなら、申請資格を持つ香港市民にイギリスの海外市民旅券を発行する支援を行う」と寄稿している。「海外市民旅券」を持つ香港市民に対し、イギリスに長期滞在して働くことを認め、将来的にイギリスの市民権を取得させようというものだ。730万人の香港市民のうち40%に当たる290万人がこの恩恵を受けられるという。
その一方で、ジョンソン氏は中国の国際社会での地位を認め、「イギリスは成熟した友好関係を望んでいる」と語っている。どうしてストレートに中国を戒めないのか。
1989年の天安門事件では、6月3日の夜から4日朝にかけ、中国政府が北京の天安門広場に集まる学生たちを武力で排除した。実弾も発砲された。しかし、中国政府は実弾の発砲を否定し、「死者数は319人」と発表した。これに対し、イギリス外務省の公文書は1000人から3000人が殺害されたと推計している。
真の民主化を目指さない限り、中国の未来はない
中国は国際社会からの批判が、再び高まることを恐れている。それゆえ、香港の民主化運動を合法的に抑え込もうとしている。合法的であれば、中国は国際社会の批判を回避できる。法律に基づく取り締まりに対し、国際社会は批判しづらいからだ。
最悪の場合、民主化運動で集まったデモの市民と香港警察との衝突がエスカレートし、中国が軍隊を出動させるような事態にもなりかねない。だが、天安門事件の悲劇を繰り返してはならない。
沙鴎一歩は真の民主化を目指さない限り、中国の未来はないと考えている。いま香港で民主化を求める若者たちのエネルギーを抑え込めば、火山からマグマが噴火するように爆発し、やがては中国本土自体が木っ端みじんに吹き飛ぶだろう。
中国政府は、世界第2位の経済発展を成し遂げたと世界に自慢する。しかし、虚栄にすぎない。31年前に天安門広場に集まった学生たちの存在を否定することで民主化への機運を抑圧し、その後も国民の人権を無視し、隠蔽を続けながら共産党の一党支配を続けてきた。そうして得られた中国の経済成長はニセモノだ。中国社会の豊かさは決して本物ではない。