毎年約900人が熱中症で命を落としている

高温多湿に体が十分に慣れていない今の季節、マスクを着けたままだと顔を中心に体温が上がり、熱中症のリスクがある。とくに体温調整の機能が弱まっている高齢者ら健康弱者は、細心の注意が必要である。

真夏日を迎えた東京・大手町でマスク姿で歩く人たち=2020年6月9日
写真=時事通信フォト
真夏日を迎えた東京・大手町でマスク姿で歩く人たち=2020年6月9日

梅雨が明ければ、日差しはさらに強くなる。猛暑日や真夏日、熱帯夜が続き、都心部ではヒートアイランド現象も発生する。マスクによる熱中症のリスクはさらに高まる。マスクの着用で体調を崩すようでは本末転倒だ。

熱中症は脱水、けいれん、頭痛、吐き気、めまい、意識障害などを引き起こす。炎天下での運動や作業、気密性の高い部屋や車内は注意が必要だ。厚生労働省の人口動態統計によると、毎年約900人が熱中症で命を落としている。決して侮ってはならない。

新型コロナウイルス感染症の対策でマスク着用が常態化している。ただし、これからの時期はマスクを付けっぱなしにしていては危ない。ときにはマスクを外して、涼しいところで体を休め、スポーツドリンクなど少量の塩分を含んだ水分をこまめに補給したい。濡れたタオルや冷却剤を太い血管のある首やわきの下、鼠径部に当てるのも熱中症の予防に効果的だ。

マスク着用で完璧に予防することは不可能と考えるべき

マスクによって新型コロナウイルス感染症を完璧に予防することは不可能だ。2月12日付の記事では「新型コロナには効果の薄いマスクを、なぜ人々は必死で求めるのか」「マスクより手洗いを励行すべき」との見出しを付けた。あくまでも予防という観点からは「着けないよりは着けたほうがいい」という程度だと考えるべきだ。

新型コロナウイルス感染症は、くしゃみや咳で飛び散る唾液や鼻水、痰などの「飛沫」によって感染する。ただし、感染を受ける側の感受性の強弱もあり、ウイルスを含んだ飛沫を浴びたからといって必ず感染するわけではない。

飛沫はテーブルや机、床にも落下し、人の手を通じてドアノブや電車の吊革にも付着していく。それらに触れた手で鼻や口元を触れても感染する。

患者・感染者がマスクを着用していれば、飛沫を直接浴びるような感染の大半は防げる。またウイルスで汚染された手で鼻や口を触っても、マスクがガードしてくれる。