なぜ社食を取り入れる企業が増えているのか
なぜ、こうしたサービスを導入する企業が相次いでいるのか。沢木代表によると、背景には「人材」を大切にしようという、企業側の想いがあるという。キーワードは「働き手不足」と「健康経営」だ。
「近年導入が進んでいるのは、いずれも人手不足が問題になっている業界です。人手不足が如実になってくると、そこに何らかの手を打たなければならないとなってきます」(沢木氏)
人口減少や高齢化によって労働人口が減少している日本では、昨年まで有効求人倍率が上昇しており、離職者が出た場合の補充は容易ではない。企業は人材を採用して終わりではなく、今いる人材を定着させなければならないという課題に直面している。
一方、従業員の側から見ても事態は深刻で、仕事の内容や環境に不満がなくても、自身の健康問題や育児、介護などの都合により、仕事を離れざるを得ない人が増えてきている。これは企業側からしても大きな損失になる。
「労働人口が減少し、人手不足が直接の倒産理由になる現代で『健康損失や育児介護等による望まない離職を防ぎ、安定した企業経営をしたい』というニーズが強まっています」(沢木氏)
駅員の仕事は不規則で体力勝負
そこで近年、従業員の健康管理を経営的な視点で考え、従業員への健康投資を行う「健康経営」という考え方が登場している。「オフィスおかん」のメニューはいずれも管理栄養士の監修の下、必要な栄養価を満たすとともに、添加物の基準を厳しく設けており、健康に気をつかった内容になっている。
鉄道業界においても、人材獲得と健康問題は重要な課題である。すでに地方では交通業界の担い手不足が顕在化しており、今後は都市部の鉄道事業者でも採用が困難になることが予想されている。また、不規則な生活を余儀なくされる鉄道員が健康問題を抱えているケースは多く、従業員の健康管理は鉄道会社にとっても重要な経営課題になっている。
だが、こうした改善には企業側の一方的な想いだけでは不十分だ。駅員の仕事は体力勝負であり、オフィスワーカーよりも必要なカロリーは高い。また、長い駅の仕事の中でも、食事は数少ない楽しみであり、ただ「健康食」を押し付ければ解決するという問題でもないからだ。