ドイツが「制限の緩和のさじ加減」に自信を持つ背景
読売社説は緩和のさじ加減にその答えを求め、ドイツの事例を挙げる。
「封鎖が長期化すれば、国民の不満増大は避けられない。感染拡大の速度が鈍った状況で、制限を段階的に緩和するのは理にかなう。問題は、そのさじ加減だろう」
ドイツでは、全ての店舗が感染防止策を講じた上で営業を再開できるようになった。メルケル首相は「感染の拡大を遅らせる目的は達成できた」と強調した。
「ドイツが制限の緩和に自信を持つ背景には、充実した医療体制がある。人口10万人当たりの集中治療病床数は、欧州の主要国で最も多く、日本の2倍以上の水準だ。これまでも医療崩壊を起こさず、感染を制御できている」
「対照的に、病院が機能不全に陥った国の道のりは険しい。イタリアでは5月に入り、屋外での運動が認められた。フランスは自宅から100キロ以内に限り、外出を解禁する見通しだ」
だが、そんなドイツでも5月6日にすべての商店の営業制限を撤廃したところ、感染者数が一時、増大した。やはり新型コロナウイルスという敵はしぶといのである。
産経社説も安倍首相の説明を「具体性がない」と批判する
5月5日付の産経新聞の社説(主張)は大阪府の緩和政策を評価する。
「『特定警戒』地域である大阪府の吉村洋文知事は府内の病床使用率や陽性率などを踏まえ、外出・休業の自粛要請の緩和を判断する姿勢を示していた」
「感染症対策と社会経済活動の両立を図るモデルケースになるかもしれない。政府は大阪府を後押ししたらどうか」
「大阪府を後押ししたらどうか」とまで社説で書く入れ込みようである。実際、吉村氏の発言には感心させられるところが多い。発言に説得力があるのは、吉村氏自身が新型コロナウイルス感染症を自分の頭で理解し、その対応を自分の頭で考えて述べているからだろう。
次に産経社説は安倍政権に対し、矛先を向ける。
「政府の専門家会議は、人との間隔を極力2メートルとるなど『新しい生活様式』を呼びかけた」
「国民に協力を求める一方で政府の説明が十分でなかった点は残念だ。首相は新規感染者数に関し、1日100人超の人が回復しているとして『その水準を下回るレベルまで減らす必要がある』と語った。ただ、それ以上の具体的な解除の条件は示さなかった」
要は、産経社説は安倍晋三首相の説明に「具体性がない」と批判しているのである。安倍首相に気に入られ、保守の一翼を担う全国紙でありながら首相を批判する。言うときには、はっきりと物を言う。これこそ本物のジャーナリズムだ。今回の産経社説の姿勢は褒められる。