パナソニックは09年3月末から欧州7カ国で白モノの販売を本格的に開始し、最終的に17カ国に展開する予定だ。満を持してのスタートである。出足は予想以上に好調で「第1四半期で冷蔵庫と洗濯機を合わせて約8000台を出荷した」(石王副社長)という。消費者が第三者の性能評価に敏感なドイツでは、09年3月発売のドイツの製品評価誌“EMPORIO TESTMAGAZIN”でパナソニックの洗濯機が“very good”の評価を得て、現地の老舗メーカーであるシーメンスに次いで2位となった。3位以内に選ばれたものが推奨商品となる。新規参入者としては画期的な出来事である。
欧州市場における消費者ニーズの変化も追い風になっている。環境意識の高まりから、パナソニックが得意とする省エネ、節水の技術が高く評価されていること。もう一つは、比較的小型が売れていた同市場で、近年、大型が売れるようになってきた。ドアが観音開きの大型冷蔵庫をリビングに置いて使っている事例もある。
同社の顔は薄型テレビ「ビエラ」と思われている。だが、現実を直視すれば、海外市場でソニーどころか韓国サムスンやLGに後塵を拝している。そこで09年度は、世界で前年度比約50%増の1550万台を売り、一挙に巻き返そうとしているが、全世界的に価格競争が激化しており薄利多売の消耗戦に突入すると考えられる。価格は08年度も前年度比で約20%落ち込み、テレビ事業は営業赤字が見込まれる。
生き残り策としては、新興国市場において大きく伸びているボリュームゾーン(26型から32型)でも利益を出せるように、コスト削減を徹底し首位を実現するしかない。大坪社長も高価格帯商品だけに特化するのではなく、ボリュームゾーンでも収益を挙げられる戦略を強調している。