では、中山はどのようにしてシナジーを生み出そうとしているのか。

「第一三共は個人の力はトップクラス。後は組織の力をつけること。組織として学習したり、戦略立案、実行力を上げていく。で、それをどうやるんや、というと、これは一般的な方法論はない。それぞれ仕事をやりながら、あるいは人とぶつかりながら、何かを発見していくのだろうと思っています。

大事なことは、肩書とか、立場を離れて、議論して、結論が出たら、とにかくそれを全員でやる。人様からいずれ、『第一三共WAY』 といわれるような、我々の流儀を生み出していこうやと」。そこにはサントリーの「やってみなはれ」の精神が、引き継がれているように映る。

中山の物腰は柔らか。関西出身でもあるからか、大阪のあきんど像を彷彿させる。中山はいま支店を回り、次に生産拠点を回るという。「スタートはまず、モノを売ってくれている人に敬意を表すること。それに生産拠点。こういう人たちの汗があって、我々はR&D(研究開発)という、将来のための活動ができる」。

人間は派閥をつくる生き物だ。はっきりいって、中山には第一にも、三共にも強力な足場はない。だから、何もできない危険も秘めている。

「裸で勝負して、逐一語らんとしようがない。中身が納得されへんかったら、リーダーにはなれへんから。そういう意味では、すべてがチャレンジなんですよ」(文中敬称略)

(門間新弥=撮影)