時代の流れが変わったからといって、企業が主力事業を変えていくのは並大抵のことでない。ところが、ほぼ15年のタームで、次々と主力事業を変え、それを成功させた企業がある。旭化成だ。

「私が入社した1969年ごろは、繊維の売上比率は(全体の)70%を超えていたと思う。いまはそれが7%くらいなものです」。こう語るのは、新社長に就任した藤原健嗣。旭化成は繊維、石油化学、住宅、情報電子、医薬と、次々と新しい分野に進出してきた。

<strong>旭化成社長 藤原健嗣</strong>●1947年2月19日生まれ。69年、京都大学工学部卒、入社。98年、旭シュエーベル社長。2000年、取締役。03年、旭化成ケミカルズ社長。09年、副社長。10年、現職。
旭化成社長 藤原健嗣●1947年2月19日生まれ。69年、京都大学工学部卒、入社。98年、旭シュエーベル社長。2000年、取締役。03年、旭化成ケミカルズ社長。09年、副社長。10年、現職。

多角化路線が本格化したのは、60年代初頭に、旭化成「中興の祖」といわれる故・宮崎輝氏が社長に就任してから。バブル崩壊後の2000年代初めには、さすがに「選択と集中」で、不採算事業の整理を行ったが、多角化路線は不変。現在、大きく分けると、ケミカル・繊維、住宅・建材、エレクトロニクス、医薬・医療の4領域を有する。

選択と集中といういまの流行りに逆行するような多角化路線は、なぜ成功してきたのだろうか。

「我々、旭化成の強みは、新しい社会的価値をつくり出していくというところに全員の興味と熱意があること。それに旭化成はしつこいですからね。やりはじめた以上は、絶対に成功させるまでやりますから」。住宅しかり、エレクトロニクスしかりである。

「普通、多角化というと、本流の人から見れば、そこは飛び地。うちの場合はいろんなことをやっていて、主流意識が薄いせいか、そこに全力を投入できる。単純にいえば、最優秀な人材を投入する」。