企業の成長の鍵を握るリーダーシップこそ、戦略的に「生産」する必要がある。ビジネス環境の変化が著しいなか、どうすれば「旬のスキル」を持ったリーダーを計画的に、長期的に育成していくことが可能なのか。

社内にリーダーの「補給線」があるか

「社員の業務遂行能力が戦略目標に追いつかない企業が多い」と指摘するのは、ベイン・アンド・カンパニーのヨハネスブルク支社(南アフリカ)のディーン・ドノヴァン副社長だ。多くの企業は、目指す目標に到達するために必要な「人材をまったく持っていない」と彼は見る。このパフォーマンスギャップを埋める鍵は、社員増や新規雇用よりも、根本の問題であるリーダー不足(リーダーシップギャップ)の解決にあるという。

リーダーの仕事は、部下のスキルと能力を最大限活用できるように仕事を定義し、割り振ることである。リーダーにその能力が不足している企業は、思うような業績を出せていないことがほとんどである。

どの部分の競争力が劣り、テコ入れが必要か。企業はそれを見定めるために、しばしばギャップ分析を利用する。だが、ギャップ分析をリーダー育成に利用している企業はほとんどない。ドノヴァンは、今必要なのは、まさにこの手法だという。

ミシガン大学ビジネススクールで、組織論と人材管理を教えているノール・M・ティシー教授も同感だ。

「私が協力しているほとんどの企業は、リーダーの補給線(リーダーシップパイプライン)を見直すべきだ。だが、今日では、モデルとなるようなリーダーシップパイプライン開発計画を持つ企業はほとんどない」

だが、ビジネスモデルがほんの数カ月で時代遅れになりかねない時代に、将来どれくらいのリーダー的人材が必要になるのかを予想することが可能だろうか。答えはイエス。ただし、かつて一般的であった手法は放棄し、戦略目標に沿ってより意図的にリーダーシップスキルを配備することが要求されている。また、社員に求められているリーダーシップを習得させるプロセスも加速する必要がある。

ティシーは、1985~87年にゼネラル・エレクトリック社の指導者研修センター(ニューヨーク州クロトンヴィル)で所長を務めた経験から、より広範囲な任務をカバーできる能力を重視するよう勧めている。

「リーダーの訓練を戦略策定と運営管理にとどめるのでは、もはや十分とはいえない。今日のナレッジエコノミーで物を言うのは、知力と統率力だ。必要なのは、変化を促し、不確実性に対応でき、人に対する洞察力に優れ、また、部下の成長を手助けし、新たなリーダーの育成に熱心な人材である」

企業は、こうしたリーダーを育てるために、具体的に「求められるリーダー像」を描いてみせると同時に、必要なスキルを習得するための「経験の場」を創造的につくり出さねばならない。