将来について、複数のシナリオを想定し、それに基づいて戦略を策定するのがシナリオプランニングの手法。テロ、エンロン・スキャンダル、10年ぶりの経済停滞……に同時に見舞われたアメリカビジネス界において、その有効性が問い直されている。

テロもエンロン事件も予測できなかったが……

シナリオプランニングの権威、ピーター・シュワーツが1999年に書いた『ロングブーム』のペーパーバック版が2000年秋に出版された。シュワーツと共著者は新版の序文でもバラ色の見通しを変えず、米国が40年続く景気拡大期の中間にあると書いた。

だがその後、米国の景気は10年ぶりに後退し、2001年9月11日のテロの恐怖が収まらないうちに炭素菌事件が発生した。またエンロン社のスキャンダルとそれに伴う衝撃によって、投資家は、企業の財務報告を疑いの目で見るようになった。さらに中東で緊張が高まるのに反応して、景気は後退を続けた。