公務員は「ルールに基づくこと」が大好き

僕の知事・市長時代の経験から言うと、公務員の場合は、彼ら彼女らが最も重視する判断基準は「ルールに基づいているか」という点だ。ルールに基づいて公平性・公正性を保つことを最も大切な価値としている。さらに、地方自治体の職員の多くは、国の方針に従うことを重視している。そのほか、住民からクレームが来ないか、自分の責任にならないかということも重要な判断基準だ。

橋下徹『交渉力 結果が変わる伝え方・考え方』(PHP新書)
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仮に住民からクレームが来る恐れがあったとしても、ルールに基づいていれば、自分(職員)たちの責任にはならない。要するに彼ら彼女らにとっては、理屈がきちんと立っていることが重要なのであって、そこには感情的なものはほとんど入り込まない。考えてみれば当たり前のことだが、役所が住民一人一人に対して、「この人はかわいそうだから」とか「この人は困っているから」とか個別の事情を持ち出して、場当たり的な対応をすれば収拾がつかなくなる。あくまでもルールに基づいて対応することが彼ら彼女らの価値観だ。

ゆえに住民感情的にはなかなか納得できないようなことでも、理屈にかなっていれば彼ら彼女らはやってしまう習性がある。

公文書をいとも簡単に廃棄してしまうことなどは、その一例だ。総理大臣との打ち合わせのメモや記録をすぐに破棄するなんて、国民はおかしいと感じる。「なぜ残さないのか、おかしいんじゃないか」と国民が感情的に言っても、役所は「いや、ルールに従って適切に処理していますから」で終わり。理屈に適っていれば、国民感情的にはおかしなことでも進んでいく。

こうした価値観、判断基準をわかっていると、相手の心の内が読めて、相手の要望の優先順位を把握しやすくなるのだ。

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