小池氏は「知事選」→「五輪」としたいのだが…

一人一人の思惑を探ってみよう。小池氏は、都知事選と五輪が接近していた従来の日程をにらみながら「五輪の顔は私しかいない」「これまでの経緯を知らない人間が五輪を仕切るわけにはいかない」ということで再選を目指してきた。それは、今も変わらない。

それだけに小池氏は、従来の予定通り今夏に五輪を迎えるのがベストシナリオ。五輪の直前に都民の審判を受けたい。

小池氏は4年前は自民党らが推した候補を破って勝っている。自民党都連との間では、その時のしこりが残る。昨年末ごろから、二階俊博党幹事長が間に入り、小池と都連の仲直りをさせて、再選を目指すというシナリオもあった。しかしその時の説得材料の1つには「五輪の前で足を引っ張りあうのは好ましくない」が大義名分だった。五輪が延期となってしまえば、この理屈は通用しない。

つまり小池氏は、五輪が延期、中止になった場合、都知事選では五輪の前景気を利用することができず、しかも自民党とのガチンコ対決を強いられる可能性が出てくる。

1年延期なら五輪は安倍氏の「花道」に

安倍氏はどうか。安倍氏は4選を目指さないと明言している。その一方で、首相在任中に五輪を開催したいと強く思っている。2013年、自らIOC総会が開かれたブエノスアイレスまで自ら出向き、招致演説をした。まさに首相のトップセールスで招致したという自負は人一倍ある。

五輪が今年行われなかったとしても、1年延期ならばまだ「安倍首相」で開催できる。9月の総裁任期ギリギリとなるが、五輪は長期政権を締めくくる「花道」ともなるだろう。

安倍氏は自民党則を変えて4選を目指そうとしているという声も根強い。新型コロナを封じ込めることで危機管理に強い首相であることのアピールに成功すれば、その道も開けてくる。むしろ、不完全な形で今夏の五輪解散するよりも、来年、平穏裏に開催する方がポイントを稼ぐことができるかもしれない。

安倍氏は23日、参院予算委員会で「完全な形での実施が、仮に困難な場合には、延期の判断も行わざるを得ない」と、延期容認に大きくかじを切った。