一貫して「1年延期」説をリードしてきたトランプ氏
トランプ大統領。彼の頭の中は大統領再選1色であるということは、よく指摘される。「新型コロナ」を何とか乗りきって11月を迎えたい。その途中に東京五輪が予定されているわけだが、米国選手団の1部を派遣できないようなことになれば、トランプ政権にとって好ましい話ではない。トランプ氏は、当面は新型コロナ対応に専念し、五輪はその後にしてもらった方がいいと考えているのではないか。
トランプ氏は12日、記者団に「あくまで私の意見だが、五輪は1年間延期したほうがよいかもしれない」と発言。延期論の流れをつくった。この発言の裏には「まずは新型コロナ対応、そして大統領選に専念したい」という思いがにじむ。
「コロナ克服」五輪の成功で再選うかがうバッハ氏
バッハ会長も自身の再選が頭の中にあるのだろう。もちろん今年7月に予定通り開催するのがベストだが、欧州の感染拡大をみるとそれは困難になってきている。
バッハ氏は19日、米ニューヨーク・タイムズ紙のインタビューに応じ、現段階で結論を出すのは時期尚早だとした上で「もちろん(今夏開催とは)別のシナリオも検討している」と語っている。1年延長して2021年に東京五輪を行う。そして「新型コロナによる世界の危機を克服して五輪を成功させた」という実績を掲げて同年、IOC会長の再選を図るというのがセカンド・ベストのシナリオなのではないか。
このように4人は「新型コロナ」とは別に自身の政治日程を頭に入れて対応を考えている。「予定通り」に期待するのは小池氏のみ。他の3人は1年延期でも問題ない。もしくは、1年延期の方が好ましいと考えている。「1対3」の構図なのだ。
今、五輪は「1年延期」が最有力となりつつあるのは、そういった構図と無関係ではないだろう。
しかしそういう発想で日程が定まっていくとしたら、五輪の理念である「アスリート・ファースト」はどこにも見えない。世界中に蔓延する「ミー・ファースト」を象徴するような決断と受け取られるようなことになれば、「平和の祭典」は色あせてしまう。