東京五輪男子マラソン代表に大迫傑(ナイキ)が内定した。3月1日の東京マラソンで自身2度目の日本新記録を出し、3月8日のびわ湖毎日マラソンでその記録を上回る者はいなかった。大迫の取材を続けてきたライターの酒井政人氏は「新記録を出した2つのレースで2億円以上を稼ぎましたが、本人は現状に甘えず、いつも『より速く走ること』だけを考えている」という――。
2020 東京マラソン ゴール 大迫が日本新=2020年3月1日撮影
写真=アフロスポーツ
2020 東京マラソン ゴール 大迫が日本新=2020年3月1日撮影

東京五輪男子マラソン代表「内定」勝ち取るまでの知られざるドラマ

大迫傑(ナイキ)が東京五輪男子マラソン代表に内定した。

3月1日に行われた東京マラソンでの走りにしびれたという方は少なくないだろう。自らが持つ日本新記録を21秒更新する2時間5分29秒で突っ走った。30km地点では13位だったが最後は4位まで浮上し、日本人1位でゴールするという華麗なる“逆転劇”だった。代表選考最終レースである3月8日のびわ湖毎日マラソンで大迫の記録を上回る者は現れず、オリンピック出場を決めた。

大迫は昨年9月のマラソングランドチャンピオンシップ(以下、MGC)で東京五輪男子マラソン代表の内定(2位以内)を手にすることができなかった。それでもMGCファイナルチャレンジで日本陸連の設定記録を突破する選手がいなければMGC3位の大迫が代表内定となる立場にあった。

日本陸連の設定記録は大迫がその時、保持していた日本記録を1秒上回る2時間5分49秒。自ら五輪チケットを奪いにいくべきか。それとも、果報を待つべきか。大迫の動向が注目されていたが、日本記録保持者は自ら“東京決着”を選ぶ。その理由が素晴らしかった。

「東京五輪うんぬんではなく、シンプルにチャレンジしたい大会だったからです。日本記録のチャンス、優勝のチャンス、ワールドマラソンメジャーズで活躍できるチャンス。そういうものに挑戦したかった」