管理が不十分な「特定空家等」に指定された後に改善を勧告されると、その状況が改善されるまで、200平方メートル以下の小規模宅地なら、固定資産税を6分の1にする優遇措置の適用外になる。しかし、どの場合も固定資産税が6倍になるわけではない。国土交通省の空き家対策の担当者が解説する。

「『特定空家等』に指定されると固定資産税が6倍になると解説する記事や企業の広告などを見かけますが、あれは誤りです。指定された時点で『住宅用地』ではなくなり、駐車場や倉庫などと同じ扱いになるので、200平方メートル以下の小規模宅地の場合なら約4.2倍に上がることになります」

結局、特定空家等に指定されると、毎年の固定資産税は跳ね上がるわけだ。「しかし、土地に家でも立ってさえいれば固定資産税の優遇措置が得られると思っている人はいまだに多い」(辻村氏)との指摘もあり、決して他人事とは考えずに注意が必要だ。

さらに空き家を放置し続けて、倒壊など危険な状態の場合、市町村が「取り壊して更地にせよ」と所有者に対し命令できる。それを拒否すれば50万円以下の過料が課せられる。最終的に自治体は空き家の撤去を強制的に代執行でき、その費用は持ち主に請求することになる。小規模住宅でも300万円に迫ることもあり、痛い出費になる。

特定空家等を回避する裏技とは

相続した実家を空き家にした人すべてが、そんな落とし穴にはまるのかというと、決してそうではない。すべての空き家が特定空家等に指定されるわけではないからだ。適正に管理されていれば、何の問題もないのである。

「月に1度は実家に帰り、掃除をしたり庭木の整備をしていれば特定空家等に指定されることはないでしょうし、本人ではなくアウトソーシングしても何の問題もありません」と辻村氏は言う。地元のシルバー事業団や空き家対策のNPO法人、そして最近では空き家の見回りや管理を代行してくれる業者も増え、よほどの過疎地でない限り対応してくれるので、実家が空き家になっている人は、それらの活用を考えてみたらどうだろう。

一方、空き家を有効に活用するために「空き家バンク」を充実させている自治体も増えてきた。これは、空き家を貸したい、売りたいという人と、借りたい、買いたいという人を結ぶ自治体のサービスで、全国の約1700自治体のうち3分の1にあるとみられ、自治体のホームページで物件を公開している。また、国交省の後押しで、大手不動産情報サービス企業が全国版を展開している。

この先、少子高齢化が進めば、住宅として売ったり貸したりすることは、さらに難しくなるだろう。そんななか、空き家の活用法として、店舗、ゲストハウスなどに転用する動きが注目されている。自治体が空き家を借り上げて、低額で貸し出し、支援している事例もある。やはり相続した後の実家の扱いについても、自分だけで解決しようと思わないことが大切なようだ。

(写真=AFLO)
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