「実はこの特例措置は、しばしば改定されます。新たに、被相続人が老人ホームに入居していた場合でも適用されるようになったのですが、要介護認定、もしくは要支援認定を受けている必要があり、さらに都道府県知事への届け出がされていない老人ホームに入居していた場合は適用外になるなど、実に細かな要件があります」

また、ハウスメーカーなどのセールスでよく聞くのが、生前、親から住宅購入資金のうち2500万円までの一括贈与が非課税になる「相続時精算課税制度」である。ところが贈与による取得になるため小規模宅地等の特例適用がない。これは二世帯住宅を建てて「同居」の要件を満たしている場合に見落としがちで、「この2500万円は相続財産に当たり課税対象となります」(水本氏)。そうであるなら、小規模宅地等の特例を選択したほうがよかったというケースも出てくるだろう。

逆に、要件が適用されるにもかかわらず「適用外」と自分で判断し、80%軽減を逃してしまうケースもある。別居であっても、亡き親に配偶者も同居の親族もいない場合は適用されるケースだ。ただし、これもなかなか複雑だ。相続の3年前までに「自己または自己の配偶者」「3親等内の親族」「特別の関係がある法人」の国内の持ち家に住んだことがなく、相続した宅地を相続税の申告期限まで保有することに加え、相続開始時に居住している家屋を過去に所有していたことがないという要件を満たしている必要がある。

また、親と別居であっても、定期的な仕送りをしていれば、「生計を共にする親族」とみなされるケースもあるという。複雑な制度だけに、自分だけで判断するのは禁物だ。また小規模宅地等の特例以外にも節税の手はあるので、1度はプロである税理士に相談したほうがいいだろう。

倒壊寸前の空き家は自治体が強制撤去も

総務省の住宅・土地統計調査では、2018年の空き家は846万戸で、売る予定も貸す予定もない空き家が、5年間で29万戸増え、347万戸に達している。相続した実家が空き家になっても、離れて暮らす人が多いことから、なかなか手をつけられないことが、この数字を押し上げているともいえる。

しかし、売ろうにも売れない“負動産”となった実家の空き家を何の管理もしないまま放置していると、周辺住民の迷惑になるばかりか、重いペナルティーを受けることになる(図参照)。

相続した空き家の実家を放置して受けるペナルティー

「所有者の義務である空き家の適正な管理をしないと『空家等対策特別措置法』で、所有者に対して、市町村が助言、指導、勧告といった行政指導、そして勧告しても状況が改善されなかった場合は、命令を出すことになります」

こう注意を促すのは、都会に住み、遠く離れた実家の相続の手続きをサポートするリーガルアクセス司法書士事務所代表の辻村潤氏だ。