法廷闘争中に民法が変わった

先述の民法改正、嫡出子と非嫡出子の相続分が同等となった件に照らすと、福永氏の場合、亡くなったのは2005年ですが、2013年9月5日に遺産分割が確定していない状況です。そのため、改正後の民法が適用されることになります。

つまり、法廷闘争をしている間に、民法が変わってしまったのです。その結果、正妻の子供たちと婚外子のAさんは、同等の相続分を有することになったというわけです。なお、この騒動については、2015年にAさんがテレビ番組に登場して世間をにぎわせて以降、どのような展開を遂げているか、今のところ不明です。

それにしても相続でモメると紛争は長引きます。法廷闘争が続くと、日常生活にも精神面にも支障をきたします。経済的にも大きな痛手を負います。相続人をこのような状況に引き込まないために、福永氏は何をすべきだったのでしょうか。

親族経営の非上場企業ならではの注意点

株式会社フクナガの年商は69億円と公表されています(2016年実績)。そんな会社の創業者で、個人の財産が30億円弱というと、ある程度の規模の財産を相続できるものと誰もが考えるでしょう。

しかし、フクナガのように親族経営で上場していない会社は、株価が高いことが多いものです。長く続く優良な会社ほど利益が蓄積され、その株式の財産価値が故人の相続財産の大半を占めることも一般的です。

そうした場合、会社の後継者は、会社を経営していくために株式を相続せざるを得ません。また、会社の末永い存続という責務、従業員や取引先への重い責任を負うことにもなります。そのためには、いざというときに個人から会社に貸すことができる資金も手元に持っておきたいものです。それらを相続するために納付すべき相続税も多額になります。