婚姻関係の形の変化を受けた法の改正
そうは言っても、過去に確定した相続まで蒸し返すと混乱するため、適用される相続は最高裁決定が下された後、つまり2013年9月5日以後に開始したものに限られることになりました。それより前に亡くなった方の相続においては、従前通り非嫡出子の相続分は嫡出子の半分です。ただし、例外として、2001年7月1日以後に開始した相続について2013年9月5日時点で遺産分割が済んでいないものについては、嫡出子と非嫡出子の相続分を同等に扱うものとされました。
戸籍の表記の改正も相続分の改正も、「さまざまな生き方を認めるべき」「自由な婚姻関係の形を認めるべき」という社会情勢の影響を受けた改正といえます。事実婚という形をあえて選択するご夫婦もいますので、こうした改正が積極的にお子さんを産む契機になればと思います。
「相続する遺産は7万8002円とする」
さて、話を紅茶王・福永氏に戻しましょう。
福永氏が2005年に101歳で大往生したあと、正妻との間の子供と婚外子である女性Aさんの間で相続をめぐる法廷闘争が繰り広げられることとなりました。なお、Aさんが福永氏の子として相続で争うということは、当然ながら福永氏から認知されている(実子になっている)ということを意味します。
紛争は、福永氏が亡くなった後、Aさんの元に弁護士から内容証明郵便が送られてきたことから始まります。その内容は「Aさんの相続する遺産は7万8002円とする」という文書と「債務不存在確認」の文書。Aさんが「債務不存在確認」の文書を返送しなかったことから、福永氏の長男らから2007年に債務不存在確認訴訟を起こされることになりました。
「債務不存在確認訴訟」とは、金銭の支払義務の有無や金額に争いがあるときに、債務者とされる側が支払義務がないことを裁判所に確認してもらい、事実上請求を止める訴訟をいいます。一方でAさんも、09年に遺産請求訴訟を起こします。
2010年に京都地裁から3000万円の和解案が提示されましたが、双方折り合いがつかず、その後2013年に約589万円の判決が出た際もAさんはこれを不服として控訴。
2015年6月には大阪高裁で6500万円の和解案が提示されましたが、これにもAさん側が応じなかったそうです。