婚外子を持つ親は、相続でどんな準備をするべきか。日本でリプトンの紅茶を広めた「株式会社フクナガ」では、創業者亡き後、婚外子への相続をめぐってトラブルが起きた。どうすれば防げたのか。税理士の井口麻里子氏が解説する——。
“京都の紅茶王”が遺した相続争い
京都市の東北にある閑静な住宅街、修学院に数寄屋造りの名建築があります。これは株式会社フクナガの創業者・福永兵蔵氏が隠居所として建てたものです。
福永氏は1930年に京都にティーショップを開き、日本にリプトンの紅茶を広めました。今も四条河原町辺りを歩けば、リプトンティーショップをいくつか見かけます。
福永兵蔵氏は「京都の紅茶王」として大成功したのち、とんかつの「かつくら」などの飲食業を展開し、一代で30億円弱とされる財産を築きましたが、一方で艶福家だったと報じられています(2015年9月1日「zakzak」掲載「財産約30億円『京都の紅茶王』相続争い泥沼化 婚外子9年にわたる闘い」より)。
それゆえか、相続にあたって福永氏の婚外子の問題が持ち上がりました。福永氏には、妻以外の女性との間に女の子がいました。女の子が生まれた当時、福永氏は60代。妻も子もいる身だったため、この女の子は法律上の婚姻という形式の外で生まれた子、つまり婚外子(非嫡出子)になります。