アルミホイル1本の量を倍にしても、箱の大きさが変わらないところに目をつけた。コンテナに入る箱の数は同じ。商品本体以外のコストは下がるから、メートル当たりの単価は上がる……思案の末に、「98円」という価格を捻り出した。
「パートさん向けの展示会で、8メートルを68円か78円に値上げするのと、16メートルにして98円で売るのと、どちらがいいかを聞いてみた」
結果は「98円支持」と出た。
「大丈夫かな、と思いつつ販売に踏み切ったが、数量が落ちたといっても10%前後にとどまり、逆に売り上げが大きく伸びました」――禍転じて福となす。大成功と言っていいだろう。
決して大それたものをつくるのではない、と茂原さんは言う。商品についての基礎的な知識があれば十分で、メーカーが求めるような専門知識は不要だ、とも。
「メーカーと同じに見えるでしょうが、そうは思っていません。使う立場から考えて商品を開発するのが我々なんです」
本来、買い手のニーズをくむのは商品開発のイロハのはず。しかし、つくり手はしばしば商品のスペック向上にばかり熱中してしまう。買い手の求めるものの追求が二の次になり、売価も上がる。
「使う立場から、本当に必要な機能を追求し、かつ価格を下げる」のが流通マン・茂原さんの基本姿勢だ。
「もともと小売りにいた者、売り場や店長を経験した者だからこそできることだと思います」――言葉の端々に、“消費者に最も近い者”の熱い自負が漲っている。
(石川忠義=撮影)