原料の高騰による値上げが相次いだ2008年、存在感を増したのがプライベートブランド(PB)。北関東の小売りの雄、カインズがメーカー品の半値でヒットPBを生み出す秘訣は「使う立場からの開発」だった。
筋金入りの流通マンが手がける「ものづくり」とは
「モノがあったほうが(話が)早いですよね。ちょっと待っててくださいね」
HC(ホームセンター)大手、カインズ(本社・群馬県高崎市)の茂原直樹さんの長身のスーツ姿は、取材中に何度かフロアから消えた。
待つことしばし、両手にフライパン、おたま等々家庭用品を抱えて戻ってきた茂原さん、それらを目の前のテーブルに並べると、一つ一つ手に取って、PRポイントを指し示しながら語り始めた。
「このフライパン、アップハンドルになってるんで、重ねられるんですよ、こうやって(大小3枚のフライパンを重ねる)、簡単に。収納にも便利。うちの扱ってる最高機種です」「売れ筋の(フライパンの)26センチは1980円なんですけど、他社のPB(プライベートブランド)でこれをやれば3000円くらい平気でしますよね」……その没入ぶりと邪気のない笑顔に引き込まれ、私は思わず何度も相槌を打った。
茂原さんが手がけるのは、同社が北関東を中心に全国展開するHC「カインズホーム」のPB「カインズ@ホーム」。PBとは、流通各社が独自に開発した一連の商品群のこと。NB(ナショナルブランド、メーカー品)とほぼ同等の品質でありながら、価格は大幅に安い。