2008年上期の原材料高騰時、フライパンや鍋などのPBも値上げの危機にあったが、金属の配合を変えて売価を据え置いた。

2008年上期の原材料高騰時、フライパンや鍋などのPBも値上げの危機にあったが、金属の配合を変えて売価を据え置いた。

その最も簡単な目安は、スーパーのチラシに書かれたNBのセール価格だ。例えば、PBのフライパンをつくる際、あるチラシにスペックの近いNBが1580円で安売り、とある。そこで「980円にすれば数は売れるかな」と考える。

「880円より980円のほうがわかりやすいし、数ばかり売っても単価が低すぎたら店が消耗するだけ。そうするとプライスポイントは980円、と」

考えなくても財布のあり金で買える額。素人目にはただただサプライズだが、メーカーとの交渉はここがスタートだ。

「中途半端な売値をつけても売れないですから、呑めないのであれば開発を中止するしかありません」とあくまで強気。結局、メーカー側は収支に見合うだけの数量の上積みで折り合う。「高く売りたい」メーカーと「より安く」を追求する流通とのこうしたせめぎ合いがなくなることはない。

「PB開発は、開発だけに時間を割ける専門職がいないとダメ」――マーチャンダイザー・茂原さんの実感である。

A4ほどのポーチに入れて持ち歩く「七つ道具」。メジャー、ノギス、ルーペ、ピンセット、磁石、秤など。金属の市価推移を一覧にした「原価ファイル」も必携。

A4ほどのポーチに入れて持ち歩く「七つ道具」。メジャー、ノギス、ルーペ、ピンセット、磁石、秤など。金属の市価推移を一覧にした「原価ファイル」も必携。

実際、忙しい。年に150日はバイヤー、海外商品部の中国人スタッフと3人で中国を訪れ、メーカーとの折衝を行う。広州で年に2回、上海で年1回行われる交易会で現地のメーカーを物色する。

訪中の際は、独自の「七つ道具」をカバンに詰め込む。ノートパソコンと記録用のデジカメのほか、大小のノギス、メジャー、ピンセット、筆談用のホワイトボードとマジック、先端にマグネットを仕込んだポインター……カインズ店頭の製品もまじえて盛りだくさんだ。

社内の品質管理部がつくった蛍光X線と呼ばれる機械も。例えば商品のステンレスが注文通りの成分比率でちゃんと仕上がっているかどうかがその場でわかるという。商品カタログとともに、原材料の市況や為替相場のデータを記したA4のファイルも持ち歩く。

「最も役に立っているのは、極東アジアにおけるポリプロピレン、ナフサなどプラスティックの市況データです。外国人相手だと、こういう数字を見せていくのが早い。国内の商談でも使えます。商品のカタログは、『あなたのつくった商品がここやチラシに載っている』と言って見せればメーカーは結構喜んでくれる」