商品を魅力的なものに見せるためメーカーや飲食店はどんな工夫をしているのか。経営コンサルタントの平野敦士カールさんは「カンロは、古臭い“飴”という言葉をZ世代の力を借りて再定義し、スタバは店内や商品のあちらこちらに『また来たくなる』仕掛けをしている」という――。

※本稿は、平野 敦士カール監修『すぐに使えるビジネス教養 マーケティング』(フォレスト出版)の一部を再編集したものです。

Z世代に向けたマーケティング「カンロ」

グミ人気の高まりとともに若年層の飴離れが進む中、カンロはZ世代と真正面から向き合い、新たな体験価値の創出に挑戦しています。その斬新なマーケティング手法は老舗企業の枠を超えた先進性を示しています。

KEYWORD→Z世代

共創から生まれる「Z世代の原体験」

カンロが展開した「Z世代 飴の原体験共創プロジェクト」は、単なる新商品開発にとどまらず、Z世代の心情と飴という文化の再接続を試みた取り組みです。

現役高校生3名を「キャンディディレクター」として起用し、彼らの率直な感性を反映した「透明なハートで生きたい」という商品が誕生しました。

カンロ「透明なハートで生きたい」
カンロ「透明なハートで生きたい」(プレスリリースより)

Z世代はお菓子を「食べ物」ではなく、「気分を整えるアイテム」と捉える傾向があり、飴に求めるのも味以上の共感や意味です。このニーズを踏まえ、ハート型の形状や透明感ある見た目、ポジティブなストーリー性を重視したパッケージを設計し、「気持ちに寄り添う飴」という新しい存在意義を提示しました。

【図表1】開発ストーリーが共感を生む
出典=『すぐに使えるビジネス教養 マーケティング』(フォレスト出版)

さらに、SNSでの拡散や共感の声が商品価値を高め、開発そのものがブランディングとなる構造を実現。共創のプロセス自体が、Z世代との信頼関係構築そのものとなっている点も特徴的です。