YouTuberにオンラインサロン……芸能人が稼ぐ方法も増えた
事務所に属していないと芸能活動もままならず、下手に独立しても仕事は先細っていくばかりで、結局、自分のやりたいことなんてできない──かつては、確かにそういうものだったのかもしれない。
ただ、いまの時代はなにしろインターネットが存在する。すでにある程度の知名度を得ている芸能人であれば、ブログをまめに更新して広告費を稼いでもいいし、YouTuberとして好きな企画を自分のやりたいように表現しながら稼ぐ方法もある。今年2月1日のYouTubeチャンネル開設から、わずか9日で100万登録を達成した江頭2:50がその好例といえよう。ファンクラブやオンラインサロン、ファンミーティング、クラウドファンディングなど、自分を応援してくれる人と直接向き合いながらカネを稼ぐ手段の選択肢も増えた。
もちろん皆が皆、独立して成功するわけではない。ただ、ネットの普及、SNSの進化などに伴って、稼ぎ方の幅が広がったのは間違いない。芸能人が古巣の事務所を離れて、最低限のマネジメント業務をしてくれる人物に月額35万~50万円ほどを支払い、自分は月に1000万円以上の手取りを獲得する……なんてことも決して夢物語ではないのだ。
芸能人事務所の待遇改善策から学べること
組織から有能な人材が流出してしまう動きを阻むには、待遇を上げるしかないのだが、果たして芸能事務所にそれができるのか。最近はコンプライアンスの観点に加えて、ネットで暴露されるリスクを軽減する意味でも、つい昔からの慣習で「オマエ、独立したら干してやるからな」といったパワハラ発言などは、決して口にできない状況になった。そうした意識の変革は、他の業種業態ではもう何年も前から当たり前のことになっていたわけだが、ついに芸能界もその大波に飲み込まれ始めた、と見てもいいだろう。
ここで私が強調したいのは「これから芸能界の待遇改善がどうなっていくのか、ビジネスパーソン諸氏は注視しておくほうがいい」ということだ。冒頭で紹介した吉本興業の「ギャラ5万円までの直営業は黙認」も、ひとつの参考事例になる。
なぜ芸能事務所の待遇改善について、その動向をチェックしておくべきなのか。それは、芸能事務所以外の組織においても、人材の流出阻止策として応用できるなど、非常に参考になる部分が多いと考えるからだ。たとえば、広告業界のクリエイターやIT業界のプログラマーといった世界では、スター社員ともいうべき優秀な人材が独立を決断して、会社から離れていくような場面がよくある。会社にとって、こうした独立は大損失だ。