タピオカメニューを作らない理由は?

ところで、競合する大手カフェからはタピオカ関連商品も販売されている。スターバックスにはない。「タピオカ」の導入を考えたことはなかったのか。

「商品開発の視点では、まったく考えませんでした。格好つけるようですが、個人的な野望としては『誰かが通った道は通らない』もあります。フラペチーノの基本商品設計としては、ストローで飲める飲み物で、例えばフローズンにするなら、“もっさりとしゃばしゃば”のバランスもありますが、オンリーワンの企画を目指しています」(中島さん)

「流行やおいしさだけを追求したプロモーションは行わず、スターバックスの価値観に合うかどうかで判断している」(同社広報)そうだ。だから、期間限定メニューでもなじみの薄い「棒ほうじ茶」を選んだのだろう。人気バッグメーカー・吉田カバンの新商品開発モットーは「流行ではなく新しさ」だと聞く。それと同じ設計思想を感じた。

ハイカロリーが心配になる時代性にどう向き合うか

そんなフラペチーノにも課題がある。例えば「カロリーの高さ」だ。冒頭で紹介した2商品でも提示したが、それぞれ515キロカロリー/506キロカロリーとかなり高い。

「甘いもの好きなので、コーヒーよりもフラペチーノを頼みます」(20代の男子大学生)
「値段も安くなく、カロリーは結構高いけど、気分転換にもなるので注文します」(20代の女性会社員)

こうした声も耳にするが、筆者の取材経験では購入者が若い世代に偏っていると感じる。中年期になると“フラぺ離れ”もあるのだ。例えば「十分楽しんだから、もういいかなという思い」、「カロリーの高さが気になり、もう飲まない」という、元愛好家(ともに40代女性)の声も聞いてきた。

かつて東さんは、「大人も楽しめるフラペチーノ」の商品開発にも携わった。今でも「購買層が広がる商品は考えている」という。

「カロリー控えめ」や「糖分控えめ」は時代の流れだ。例えば国内飲料市場では近年、「ウィルキンソン」(アサヒ飲料)など無糖の炭酸水が驚異的な伸びを示している。富士経済によると、2019年の無糖炭酸飲料の市場規模は600億円に達する見込み。健康志向の高まりでむぎ茶飲料の伸びも著しい。こうした現象をどう考えるか。

タピオカとフラペチーノは、「購入世代が圧倒的に若い」という共通点がある。それでも、これまでフラぺ人気が続いてきたのは、時代とともに顧客層の若返りに成功したからだろう。

だがこの年代は、数歳違いでも「世代が違う」一面もある。そうなると、例えば「おいしくて、甘くて、カロリー控えめ」が、今後の活動の肝になるかもしれない。

(撮影=プレジデントオンライン編集部)
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