組織の未来は必ず切り開ける

社員一人ひとりの可能性を引き出せば組織の未来は必ず切り開ける――そう信じた戸田氏がまず着手したのが1on1でした。

「一人ひとりと30分~1時間、膝を突き合わせて話を聞きました。投げかけた質問は、『どんなときにワクワクするか』『挑戦したいことは』など。各社員の強み、よさを見つけフィードバックもしました」

長年、指示されるまま働いていた社員のなかには、いきなり質問をぶつけられ、頭が真っ白になってしまう人も多かったそう。それでもトップから直接問いかけられ、「自分は何がしたいのか」と内省したことで意識には変化が生まれたのではないでしょうか。

個性を発見してもらうべく、価値観を特定するワークショップも行いました。自分の行動などの傾向を抽出する作業を行い、最終的に「勝負」「サポート」などコアとなる価値観を明示。その価値感を同僚とも共有することでお互い考えていることが認知できるというものでした。

さらに戸田氏が行ったのが、製品アイデアのプレゼン大会。優秀作品は製品化することを宣言し、アイデアを募集したところ、20案ほど集まったそうです。グランプリに輝いたのは、現場で加工に携わる職人が発案した「耳かき」。精密メーカーならではの切削や研磨の技術を応用。製品化決定後、プロダクトデザイナーや江戸切子の職人にも協力を依頼し、商品化に漕ぎつけます。その耳かきは1本1万円ながら累計約400本を売り上げる人気商品に。創業以来初のBtoC商品の誕生に社内は沸き上がりました。

「いままでマニュアル通りに操作していた機械が、まるで素晴らしい玩具のように見えているらしいのです。『そろそろ新製品を』という声も出るなど、これまでと違う空気が生まれています」

1on1から始まった内発的動機を高める活動。戸田氏は「組織貢献の先に、社会にさらなる価値を生み出せる企業にしたい」と話します。理化電子の挑戦はまだまだ続きそうです。

▼今回のお手本
【理化電子】
1961年創業。半導体製造用装置に用いる精密治工具の製造販売や電子部品の検査システムの製造、販売を行う。現在東京、大阪に営業所、熊本と長野に工場を構えている。海外子会社も台湾、アメリカなど5社を有する。
●本社所在地:東京都港区三田1丁目4番地28号
●売上高:15.8億円(2019年3月期)
●従業員数:97名(2019年12月時点)
(構成=西川敦子)
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