【田原】サインポストは何をしている会社ですか?

田原総一朗●1934年、滋賀県生まれ。早稲田大学文学部卒業後、岩波映画製作所へ入社。テレビ東京を経て、77年よりフリーのジャーナリストに。著書に『起業家のように考える。』ほか。

【阿久津】もともとは金融のコンサルをやっている会社です。社長は地域の活性化に課題感を持っていて、地方の店舗の人手不足問題を解決するために、決済を無人化する基礎研究をしていました。ただ、単独では製品化に時間がかかるので、JRと一緒にやれないかと話をいただきました。その話を聞いて約半年後の17年に埼玉の大宮駅で1週間の実証実験を行いました。

正直、大宮のときは急ごしらえのシステムで、不具合がたくさんありました。オープン5分前までシステムが動かなかったり、2日目にシステムが止まってしまってお客様にお詫びしたり。やってみて初めてわかったことが多く、それらを改善して18年に赤羽駅でまた実証実験を行いました。

【田原】赤羽では何が改善されたんですか?

【阿久津】画像認識精度の向上です。大宮のときは人や商品が重なったときにうまく検知できないことがあり、お客様は1人ずつでしか店舗に入れませんでした。赤羽では、それらを認識できるように改善。同時に3~5人が一緒に入って買い物ができるようになりました。

【田原】今度は仮設ではなく、ちゃんとした店舗?

無人決済システムで人件費を削減すること

【阿久津】はい。じつは実証実験という生煮えのものを駅でやることについてJR内で大きな反対があったんです。ただ、赤羽駅に売り上げが厳しいため閉店したキオスク売店跡地があり、そのような空き店舗を無人決済システムで人件費を削減することでサービスを継続することができれば、ホーム上や地方でキオスク売店を維持することができるのではという考えでスタートしました。

【田原】赤羽での実験はどうでしたか。

【阿久津】赤羽の店舗には1日約500人くらいのお客様が来てくださいました。ただ、同じ業界の方も多くて、本当に認識できるのかどうか、たくさん意地悪もしていただきました(笑)。

【田原】たとえば?

【阿久津】商品を店内で投げたり、あえて手をクロスして商品を取ったり、はたまた店内を走り抜けたり。でも、おかげで課題がたくさん見つかりました。意地悪ではないですが、お子さんを抱っこしたお客様が来店して、店内でお子さんが離れて歩き出したら、認識できなくなったというケースもあった。いいテストケースをたくさんいただいたいい実験になりました。

【田原】赤羽店は2カ月で閉めた。

【阿久津】いまは社内のデモ店舗で、見つかった課題の改善に努めています。技術的に明かせないところがあるのですが、システムの精度を上げて、次の高輪ゲートウェイでは入店人数の制限なしでいけそうです。

【田原】阿久津さんは、もともと小売りをやりたかったんですか?