【阿久津】それまでグループ各社がバラバラに出していたポイントを「JREポイント」にまとめる仕事を担当しました。JREポイントの導入が16年2月にあって、その後にJR東日本スタートアップを立ち上げたという流れです。

【田原】いまはTOUCH TO GOという会社の社長ですね。この会社はいつできたんですか?

【阿久津】19年7月にJR東日本スタートアップとサインポストの合弁でできた新会社です。サインポストがアクセラレータプログラムの最優秀賞を獲って実証実験が始まりましたが、誰が事業リスクを負うのかというのが曖昧で、そのままでは「実証実験をやってよかった」で終わるおそれがありました。リスクを取って前に進めるには母体が必要。この事業にはそれだけの価値があると思って、会社を設立しました。

【田原】本社からすんなりOKは出たんですか?

逆に背中を押してもらえました

【阿久津】いや、それもいろいろありまして。たとえば、スタートアップ企業が描く数年事業投資をして、赤字を出し続け、一気に事業拡大を目指すJカーブを描く事業計画への懐疑の声。あとは私自身が30代で、JR本社だと下手をすると若手と呼ばれてしまう年齢だった。それらに対して不安の声もあったのですが、上には根気強く説明して説得しました。いろいろな難関をクリアして最後に役員に説明しに行ったときには、「出資金6億円で夢が買えるならいいじゃないか」「なぜ早くやらないんだ」と、逆に背中を押してもらえましたね。

【田原】高輪ゲートウェイでうまくいったら、次はどうするの?

【阿久津】米国でアマゾンが無人店舗を始めましたよね。アマゾンは自らが小売店となるビジネスモデルのようですが、私たちは小売店に無人決済システムを提供するビジネスモデルです。高輪ゲートウェイ店は、システムのショールーム的な位置づけ。無人決済がきちんとできるんだということを、人手不足で悩んでいる小売店の皆さんに見てもらえたらなと。

【田原】グループの駅ナカのコンビニもお客さんになるということ?

【阿久津】もちろん真っ先に営業しています。ただ、ほかのコンビニや外の一般的な路面店もお客様になってきます。

【田原】アマゾンの無人店舗はどう見ている?

【阿久津】あれだけの商品数やお客様を認識するのは凄いと思います。実際に行ったときは無人と言いつつ、ほぼ人が案内していましたが(笑)。アマゾンでも完全に実現できていないことを日本で実現したいと思っています。

【田原】TOUCH TO GOの事業がうまくいったら、将来はどうする?

【阿久津】今回カーブアウトという手法で新会社をつくったので、今後はJR東日本以外からの出資を受けることも考えていきたい。将来は上場を目指しています。狙っているのは、文房具メーカーからスピンアウトして大きくなったアスクルのイメージです。

【田原】まだまだ大きくなりますね。ぜひ頑張ってください。

阿久津さんへのメッセージ:大企業の中での、新しいキャリアパスを突き進め!

(構成=村上 敬 撮影=佐藤新也)
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